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新株予約権とは(11/6)


 

kaisha11

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(マンガ:まんがで気軽に経営用語 様)

 

 

新株予約権というのは、ざっくり言えば、「新」しく「株」式を取得することを「予約」しておける「権」利です。

 

新株予約権とは、「株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいう」(会社法2条21号)と定義されています。

 

そんなに難しくありませんよね?
マクドナルドのポテト無料券や、10円券みたいなものです。
「いつまでに、~~円払えば(あるいは無料で)、ポテトがもらえるよ!」という権利の、ポテトの部分を株式に変えたのが、新株予約権です。

 

さて、この新株予約権というのは、未だ株式ではない訳ですから、「議決権」もなければ、「配当を受ける権利」もありません
同じ100円で、「1株無料でもらえる新株予約権」と「1株」と、どちらかが買えるとしたら、どちらを買います?
さっさと株式を持っていた方が配当受けられるし、会社経営にもある程度口出せるのですから、フツーは「1株」を買いますよね?

 

ですので、この新株予約権というのは、特殊な使われ方をするために登場した権利です。

 

その使われ方というのは、(新株予約権付社債という資金調達の一手段(金融商品)としての使われ方を除けば、)主だったものとして、ストックオプション会社防衛の二種類の使われ方があります。

 

ここでは、マンガに沿ってストックオプションとしての使い方について軽く見ておきましょう。より正確に説明するために、少し事情を付け足します。

 

現在株価が「500円」で、社員には、「今から10年間の間、いつでも1株600円で100株分だけ株式を購入できる権利」(という内容の新株予約権)が「無料で」与えられていることにします

 

この「権利」は、「今から10年間」使える訳ですから、その権利をもらった社員は、どう思います?
今、この権利を使ったら、(600円×100株=)6万円払って、(500円×100株=)5万円分の株式を買う事になるわけですから、損しちゃいますね?
だから、今使うわけがありません。

 

そこで、何とか株価をこの10年間で少しでも高くして、600円を超えたらこの権利を使おう、600円を超えなかったら、この権利を使っても損するだけだから使わないでおこう。
こう考えるのです。
そして、社員が株価を少しでも高くする方法は、業務に励んで、会社の業績を良くすることです。

 

社員をこのように動かしたい(会社の業績向上へのインセンティブを与えたい)、という考えの下、新株予約権が使われているのです。

 

(株価が600円を超えなかったとしても、社員は1円たりとも損をしていない事に留意して下さい。新株予約権自体は、無料で手に入れていますし、新株予約権は、「使うことができる権利」であり、「使わない事もできる」ため、損するのであれば放棄すればそれでよいのです。)

 

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(もう一歩前へ)

 

上述のように、会社の防衛策としても新株予約権は使われます。
この点に、軽く触れておきます。

 

まず、経営陣の敵(余談ですが、これが会社の敵であるとは限りません)にとっては、いかなる方法であれ、株式を集めて議決権を一定割合保有し、経営陣に自分たちの手の者を送り込もう(あるいは、経営陣を刷新して自分達が経営権を握ろう)、というのが一つのゴールです。

 

そこで、防衛策としては、株式を集められても議決権は渡さないために、(「拒否権付株式」や「議決権制限株式」などの)「種類株式」を発行しておくか、そもそも株式を一定割合保有させないようにするのが、オーソドックスな防衛策の考え方です。

 

新株予約権発行は、後者の考え方に基づくものです。

 

公開されている株式を、経営陣のイニシアチブで、敵に一定割合保有させないようにするのは、容易ではありません。公開されているのであれば、基本的に誰がどれだけ買おうと自由だからです。

そこで、取引銀行やグループ企業に、あらかじめ一定割合の株を持っておいてもらうのが事前にできる一つの防衛手段です。

 

しかし、それには限界があります。
仮に銀行とグループ企業に合わせて34%保有してもらったとしても、残り66%は、買い集められる可能性が残るからです。

 

そこで、いざ敵が攻めてきました。株式を買い集めまくってます。
これに対し、経営陣は、株式を買い集めている行為には、やめろ!という訳にはいかず、全く手が出せませんから、全体の株式の量を増やすことで、敵の保有割合を下げ、一定割合保有されることを避けようとします

 

でも、攻め込まれてから、あわてて「株式」や「新株予約権」をそこで発行したのでは、経営陣が自分たちの経営権を守るために、資金調達の必要もないのに、株主の利益を犠牲にして、新株を発行しているという非難を免れず、新株の不公正発行の可能性もあるとして厳しい規制の対象となりますので、それはなかなかできません

 

そこで、敵が攻めてくる「前」に、グループ企業などに、いざとなったら、助けてね、これを株式にして、敵の保有割合を下げてね、と約束して「新株予約権」を配っておくのです。そして、敵が攻めてきたら、グループ企業にお願いしにいって、新株予約権を株式に変え、全体の株式の量を増やして、敵の保有割合を下げるのです。

 

これが、「新株予約権」による企業防衛の基本的な考え方です。

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