(マンガ:まんがで気軽に経営用語 様)
何故購買の株を上げようと思ったのかが一番気になります・・・。
さて、金庫株ですね。
今では自己株式と呼ばれる方が多いですし、会社法上の正式名称は自己株式です。
簡単に言えば、自分の会社の株式です。
会社法においても、「株式会社が有する自己の株式」(会社法113条4項)と定義されています。そのままですよね。
この自己株式(金庫株)は、突っ込んで勉強するとホント難しいです。
ですので、基礎を押さえるのに終始しましょう。
基礎というのは、何故「株式」の中でも「自社の株式」を特別扱いするのか、自己株式取得の取扱いは現在大体どんな感じになっているのか、を理解することです。
一から説明します。
そもそも株式会社というのは、「資本」と「(資本を増やす)能力・労力」を結びつけるシステムでした(=所有と経営の分離)。しかし、他人に「資本」を任せて増やしてもらう際、その他人が失敗した全責任を「資本」の持ち主が負うのであれば、誰も「資本」を他人に任せようとはしません。
そこで、「資本」の持ち主は、出資した額以上の責任を取らなくてよいことにしました。これが、株式会社が間接有限責任たるゆえんです。(ちなみに、「間接有限責任」の意味については、「合資会社」の記事をご覧下さい。)
もっとも、企業が取引する際、いざとなったらいくら回収できるかは、最重要の関心事項です。それが分からないのであれば、怖くてそんな会社と取引したくないからです。
株式会社が取引社会のプレーヤーとしてやっていくためには、ここ(=責任財産)を明らかにする必要があるのです。
株式会社は間接有限責任ですので、社員である株主からは、取引先の企業はいざという時、全く回収できません。そこで、株主から入れられた「資本」こそが、いくら回収できるか(=責任財産)の指標となることになります。
ですので、「資本」はちゃんと入れなければならないし(=資本充実の原則)、一度入れた「資本」はそのままにしなければならない(=資本維持の原則)というルールが出来上がったのです。
さて、ここまでの説明で、大体私の言いたいことが分かってきたのではないでしょうか。
「資本」をそのままにしなければならない、というのは、株主に出資金の払戻しを認めない、ということです。(この表裏として、株主の投下資本回収の途を閉ざさないため「株式譲渡自由の原則」があります。)
では、会社が自己株式を取得するとどうなります?
会社のお金が株主に渡り、その対価としてその会社の株式が会社のものになりますよね?
これって、この「お金」が「資本」であれば、出資金の払戻しそのものじゃありませんか?
このように考えて、会社法は、自己株式の取得を、資本維持の原則に抵触しかねない存在として、他の株式の取得とは特別扱いしている訳です。
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(もう一歩前へ)
自己株式取得がマズイ理由として、①資本維持の原則に抵触する(=会社債権者を害する、ひいては株式会社の取引社会における地位を危うくする)というお話をしてきました。これが、最も大きな理由ではあります。
しかし、他にも、②会社(の経営陣)が、自己株式を持ってしまったら、それを支配の長期化などの経営陣の個人的な利益のために議決権を用いるおそれがあることや、③自己株式の取得はその方法と価格によっては、株主間の公平も害するおそれがある、という理由、④相場操縦やインサイダー取引の温床となってしまう、という理由も挙げられていました。
そのため、平成13年度の商法改正までは、自己株式の取得及び保有は原則禁止されていました。
しかし、これらのマズイ理由をある程度払しょくできる自己株式を観念できるのであれば、金融の手段はできるだけ多様であった方がよいのではないか、という考え方に変わってきました。
まず、①資本維持の原則に抵触する、という点に対しては、自社株を「剰余金配当可能額の範囲内」で取得できることにすれば、「資本」には手を付けていない訳ですから、資本維持の原則には反しないです。また、②議決権の濫用のおそれに対しては、自己株式の議決権を停止すれば解決します。③株主間の公平については、自己株式の取得方法と価格を法で規制すれば、一定程度は懸念を払しょくできますし、④相場操縦等の危険は、金融商品取引法で規制すれば、これまた一定程度は危険を減らせます。
このように考えられているため、現在では、規制はきちんとかけられてはいますが、かなり広範に自己株式の取得は容認されています。