問題:(完全オリジナル問題)公務員Aは、B大臣から懲戒免職処分を受けた。この懲戒免職処分は、Aが強盗で逮捕されたという全くのデマに基づくものであり、何らの根拠もないものであるとする。Aは、研修で海外留学中であり、処分から1年半経過した後に、ようやくこの事実を知った。このとき、Aはいかなる訴訟を用いて公務員たる地位の回復を図ればよいか。結論及び他の訴訟形式ではダメな理由を一つ挙げて、40字程度で記述しなさい。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
私が作ったオリジナル問題の中でも相当難しい部類といってよい問題である。救済方法が頭の中で複数浮かばないと解けない。
まず、国家賠償訴訟はどうだろうか。これは、金銭的救済を目的とする訴訟であるので、公務員たる地位回復を目指すAの手段として適切ではない。
では、取消訴訟はどうだろうか。取消訴訟は、「処分の日」から
(①3か月②6カ月③1年④2年)
以内に提起しなければならないため、1年半を経過した本事例では提起できない。
そこで、やっと本題なのだが、では無効確認訴訟はできるだろうか。結論からいうと、これはできない。
本事例はAが公務員の地位を求める訴えを
(①争点訴訟②当事者訴訟③民事訴訟④義務付け訴訟)
として提起すれば救済されるため、例外的にのみ認められる無効確認訴訟はできない。
この点が、本問における出題の趣旨である。詳しく見ていこう。
まずは、無効確認訴訟の抗告訴訟における位置づけから、この結論を説明する。本来、行政行為が無効であれば、公定力が働かないため、当然に無効であり、無効確認訴訟をするまでもない。
権利回復を図るならば、行政行為が無効であることを前提とした民事訴訟(これを争点訴訟と呼ぶ)や当事者訴訟で争えばよいのである。このため、無効確認訴訟という特別な類型の訴訟を持ち出すべき場合はかなり限られてくる。
今回も、懲戒免職処分の無効を前提とした当事者訴訟で争えばAの利益は回復するため、無効確認訴訟という例外手段で争うべきではないのである。
次に、無効確認訴訟の条文から、Aが無効確認訴訟を提起できないという結論を説明する。
行政事件訴訟法36条は、無効確認訴訟を提起できる者を限定しており、
「(①現在の法律関係②過去の法律関係③他の抗告訴訟)に関する訴えによって目的を達することができないもの」という形で限定している。
この「現在の法律関係に関する訴え」というのは、争点訴訟と実質的当事者訴訟を指す。これは、「当該処分・・・の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴え」と36条は規定しているのだが、
「当該処分・・・の存否又はその効力の有無を前提とする」という修飾語から、「現在の法律関係に関する訴え」とは、争点訴訟と、争点訴訟の公法版である実質的当事者訴訟のような権利訴訟を指していると理解できるのである。
従って、今回は実質的当事者訴訟が可能なので、無効確認訴訟という行為訴訟は提起できないのである。
なお、全ての概念について説明していると余白が足りない。今あえて権利訴訟・行為訴訟という抗告訴訟と当事者訴訟を区分する重要概念を記載しておいたので、ぜひ調べてほしい。
今回のキーポイントは、通常の瑕疵を争う場合は、行為訴訟が原則で権利訴訟が例外であるが、無効の瑕疵については、権利訴訟が原則となり、行為訴訟が例外となるということである。
ちなみに、これはもう説明できないが、判例はこの区分をやや柔軟に解釈し、直截適切基準により判断している。この基準も、権利訴訟と行為訴訟を区別する理解が出発点にあるし、今回の事例は、この基準からも当然無効確認訴訟は提起できない。
(解答)
③②①
・3問20点。均等配点。小数点第一位四捨五入。