問題:(司法試験昭和54年度第2問改題)AはB市の建物の一室を使用して理髪店を経営していたところ、Aの使用している部屋を公務に使用する必要が生じたので、BはAの市所有の建物における経営をやめさせたいと考えている。この場合、Bはいかなる方法をとりうるか。また、その際に補償をする必要があるか。その方法の実効性を確保するために、行政代執行法に基づき代執行することはできるか。この3点について結論のみを40字程度で記述しなさい。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
B市が、自己の所有する建物の一室を使用させて、Aに理髪店経営を認めた使用許可行為は、公有の建物を使用して経営する自由というものが、本来的にAが有する自由とはいえないため、かかる使用許可は講学上の
(①許可②認可③特許)にあたる。
そして、Bがその使用許可の効力をなくそうとする場合、本事例においては、行政行為の効力は有効に成立しており、その後の事情変更を理由に効力を失わそうとしているため、
(①行政行為の取消し②職権取消し③行政行為の撤回④職権撤回)
の可否が問題となる。
取消しと撤回は、行政行為の効力に当初から瑕疵があったか否かにおいて異なることに注意されたい。
そして、撤回の可否が問題となるのだが、講学上の特許にあたる行為については、行政庁の裁量が広く認められるため、原則としては自由に撤回できるものと考えられる。
もっとも、本件のような授益的行政行為の撤回については、既得権を侵害するものであるため、撤回の根拠規定が必要となるが、地方自治法238条の4第9項に根拠規定が認められるため、結局撤回は可能であると考えられる。
また、本件のように公用財産の目的外使用のケースにおいては、いずれ必要が生じれば使用権を喪失することは、使用権の内在的制約として当初から制約が存在していたものと考えられるので、
撤回にあたって、補償をする必要は
(①ある②ない)
ものと考えられる。
もっとも、この点について、権利対価補償は必要ないが、移転費用等の付随費用等について別途補償を検討すべきという立論はありうるため、付随費用については、という限定つきであれば、肯定してもかまわないと考えられる。
では、撤回の実効性確保のために、代執行できるか。
代執行というのは、行政が義務者の代わりに、義務を果たし、その費用を後で義務者から徴収するという手法である。
本事例でいえば、B市がAの代わりに業者に頼んで、荷物を全部別の場所に移転・保管して、Aが使っていた建物のスペースを空っぽにした後、業者に対して支払った移転・保管費用をAに請求するという手法ができるのか、ということである。
この点、庁舎の明渡義務は、義務者が自らの意思に基づいて明け渡すことが想定されているので、代執行可能な代替的作為義務に
(①あたる②あたらない)。
これは、Aが負っている義務は空っぽにするだけでなく、自主的に出ていくことなので、他人が代わってできることではない、とされているからである。納得できない方も多いと思うが、判例はこのように判断したので、判例の立場として受け入れる他はない。
(解答)
③③②②
・4問20点。均等配点。