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過失相殺能力(初級)


問題:(完全オリジナル問題)4歳になったばかりのAは、母親Bが目を離したすきに道路へ飛び出し、Cの運転する自動車に跳ねられ、重傷を負った。この場合、被害者Aは未だ4歳であるので、事理弁識能力すら認められなかった。裁判所は、CAに対する損害賠償額を定めるにあたって、過失相殺をなすことができるだろうか。

 

(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)

 

まず、4歳であるAが、道路へ飛び出した過失について裁判所が考慮に入れることはできるだろうか。

 

人が過失行為により責任を問われるのは、あくまで過失の無い行為を選択する能力があったのに、その行為を注意義務違反により取らなかったことに求められる。

 

この能力を責任能力と呼ぶが、過失相殺の対象となる過失においても同様の能力が要求されるのだろうか。

 

現在の判例は、過失相殺能力(過失相殺の対象となるために要求される能力)の水準は、

(①責任能力と同等である②責任能力より高い③責任能力より低い)

ものと考えている。

 

責任能力は、個人差はあるが、通常1112歳から認められるのに対し、過失相殺能力として要求されるのは、道理をわきまえるという事理弁識能力で足りるとされ、これも個人差はあるが、通常45歳から認められる。

 

もっとも、本問Aは、問題文によると事理弁識能力に欠けていたため、Aは過失相殺能力を有さず、結局Aの過失を損害賠償額の決定において考慮する事は許されない。

 

では、母親Bが子Aから目を離したという過失は考慮できるだろうか。

 

本来、加害者はC、被害者はAであり、BAの法定代理人にすぎず、Bの過失は考慮されないはずである。民法7222項も、「被害者に過失があったとき」と表現しており、過失相殺の対象は条文上被害者しか予定していない。

 

しかし、過失相殺は、不法行為によって生じた損害の公平な分担を図るためのものであり、この趣旨からすると、被害者側の者に過失がある場合は、その過失による不利益は加害者に負わせるより、被害者に負わせる方が公平に資すると評価できる。

 

そのため、判例は、「被害者」の枠を拡張し、

被害者と身分上ないしは(①生活関係上②血縁上③社会実態上④戸籍上)一体をなすとみられるような関係にある者

であれば、その過失を過失相殺の対象とすると判示している。

 

母親Bは、子Aと少なくとも身分上一体をなすとみられる関係であるため、裁判所はその過失を過失相殺の対象とすることができる。

 

従って、BAから目を離したという過失について過失相殺できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(解答)

③①

220点。均等配点。

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