問題:(完全オリジナル問題)Aは、Bに10万円を貸すにあたって、担保を得ようと考え、Bの同意の下、Bの有する腕時計(10万円相当)の引渡しを受けることにより、腕時計に質権を設定した。もっとも、Bは翌日、週末のパーティーで腕時計を使う必要が生じたから一旦返すよう頼み込み、Aはしぶしぶ腕時計を返還した。ところが、BはCに対して腕時計を8万円で売り、Cに腕時計を引き渡してしまった。Aとしては、Cに対して質権に基づいて何らかの請求ができるだろうか。Aは質権を未だ有しているか否かの結論と併せて、40字程度で記述しなさい。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
まず、Aは占有を喪失した現在においても、未だ質権を有しているかを検討する。
質権の存続を考えるにあたっては、344条「質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる」という条文をどう理解するかがカギとなる。
通説は、留置的効力の伴わない質権という存在を344条が否定したと考え、質権者が占有を喪失したならば質権そのものが消滅すると考える。このように考えたならば、本問において質権は
(①存続している②消滅している)ことになる。
しかし、判例は、344条は公示方法を厳格にしただけと考え、345条(質権設定者の代理占有の禁止)違反の効力も、代理占有の効力を否定するに過ぎないと考える。この立場からは、本問において質権は
(①存続している②消滅している)ことになる。
判例の立場に立つことは、解答にあたっての暗黙の了解であるので、質権は存続していることを前提とする。
では、質権に基づいて腕時計の返還を請求することができるだろうか。
この点、動産質権者Aは、352条によれば、
(①継続して占有②一度占有③登記を④引渡しを)
しなければ質権を第三者に対抗できないため、
占有を現在有していないAは、第三者Cに質権を対抗できない。
また、占有を奪われたわけでもないので、占有回収の訴えすらAはすることができない。
従って、Aの打つ手は何もなく、何らの請求もできないというのが答えとなる。
(解答)
②①①
・3問20点。均等配点。小数点第一位四捨五入。