問題:(完全オリジナル問題)Aは、Bの所有する甲土地について売買契約を締結した。しかし、Bは、Aより高い額を提示したBの債権者Cに代物弁済しようと翻意し、Aに甲土地の引渡しや移転登記をする前に、Cに対して甲土地を引渡し、かつ、移転登記も済ませてしまった。登記なくしてCに所有権の取得を対抗できないため、Aは所有権の取得を主張する事はできないが、BのCへの代物弁済が、既に甲土地引渡しについての債権者であったAを害する行為であったとして、債権者取消権を行使しようと考えている。Aの有している債権は、甲土地引渡し請求権という特定物債権であって、金銭債権ではなかったが、Aは債権者取消権を行使できるだろうか、理由と結論を40字程度で記述しなさい。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
原則から確認する。
詐害行為取消権制度は、債務者の責任財産を保全するために認められている。責任財産を保全する必要があるのは、債権者が責任財産に対して保護に値する適法な期待を有しているからである。
このような責任財産への期待は、債権者の有する権利が金銭債権であるからこそ認められる。特定物債権であれば、その特定物の帰属にこそ期待はあれども、債務者の総財産である責任財産に対して保護に値する期待を有しているとは評価できないからである。
このように、被保全債権としては金銭債権が想定されているわけである。
この原則に例外は未だ認められていない。ただ、少し修正がなされているのである。ここが判例の立場について理解を左右するポイントである。
つまり、判例の立場からも、被保全債権は、金銭債権でなければならない。この原則は揺らいでいない。
ただし、
(①詐害行為取消権行使当時②詐害行為時③債権成立時④債務不履行時)
に金銭債権であれば足りるという修正がなされているのである。
つまり、成立当初や詐害行為がなされた時点では金銭債権でなくてもよく、詐害行為取消権行使時に金銭債権となっていればそれで足りると考えられているのである。
これは、例えば本問のような事例の場合、BがCに対して甲土地を引き渡した詐害行為の時点では、AのBに対する債権は、甲土地引渡請求権という特定物債権であるが、Cが登記を備えた時点で、その特定物債権は履行不能となり、損害賠償請求権に転化する。
この損害賠償請求権は金銭債権であるため、詐害行為取消権行使時には被保全債権が金銭債権であると評価できるのである。
このことについて判例は、「(特定物引渡請求権も)窮極において損害賠償債権に変じうるのであるから、債務者の一般財産により担保されなければならないことは、金銭債権と同様」と表現している。
この判例を、特定物債権も、損害賠償債権となりうるため、金銭債権に転じうる性質を有することから、被保全債権として特定物債権を一般的に承認したと理解するのは誤りであるから注意してほしい。
従って、結局Aの有する債権は、Cが登記を備えたことによって、履行不能により損害賠償請求権に転化しているため、被保全債権となりうる。よって、詐害行為取消権を行使できる。(詐害行為取消権が認容されるか否かは、別の話であるし、本問で問われていない。)
(解答)
①
・1問20点。