問題:(完全オリジナル問題)Aから無償で借りて絵画を占有していたBが死亡し、相続人Cがこの絵画をBが所有していたものと思い、自分の絵画となったと思って占有を開始した。Cが将来時効取得をするためには、Cの占有が自主占有でなければならない。判例によれば、相続人Cの占有が他主占有から自主占有に転換するためには、いかなる事がなされる必要があるか。40字程度で記述しなさい。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
単純な知識問題であり、解答にはさほど苦労はしないと思われるが、理解しようとすると意外と難しい問題である。
まず、Bは絵画を借りていたのであるから、Bの占有は
(①自主占有②他主占有)である。
そして、占有権は相続の対象となり、Bの占有権はCに相続される。このとき、CはBの占有と同じ内容を主張できるにすぎないので、Cの占有は
(①自主占有②他主占有)である。
もっともCは、Bとは当然別人格であり、包括承継という形で占有を新たに取得した者とも評価できるわけであるから、187条の「承継人」にあたり、自己固有の占有を主張することもできる。
しかし、占有の実体としては、Bの占有の延長線上にあるわけであるから、185条にいう「新たな権原」がなければ、自己固有の占有を主張したとしてもそれは依然として他主占有である。
そこで、「新たな権原」とは何かが問題となるのだが、判例は、(傍論ではあるが、)相続人にも相続財産を事実上支配することによって占有を開始し、その占有に所有の意思があるとみられる場合であることによって、「新たな権原」取得の可能性を認めている。
この要件を満たして初めて自主占有といえることとなるのである。
ここからは余談だが、占有権の相続という概念に違和感を持たれた方もいるだろうが、その違和感は持ち続けてほしい。
占有権の相続という概念は、相続によって占有の空白を生じさせないためにやむなく作られ承認されているものであって、本来占有権とは、占有という事実状態に基づいて不断に発生する権利であって、承継の対象となるものではないはずだからである。
(解答例)
②②
・2問20点。均等配点。