問題:(司法試験平成元年度第1問改題)Aは、Bに対し、自己の所有する中古のテレビを贈与することを約し、Bへの送付をCに委託した。ところが、Cによる輸送の途中、Dがこのテレビを盗み、Eに売り渡した。Eは、このテレビが盗品であることについて善意・無過失であった。Bは、Eに対してテレビの引渡しを請求することができるだろうか。Bによる請求の根拠と、本事例において請求できるか否かを40字程度で記述しなさい。
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本問は間違いなく難問である。出題の趣旨は、所有権の移転時期及び盗品についての即時取得の処理を判例の立場に基づいてなすことができるかである。
特定物の贈与については、特約の無い限り、契約と同時に所有権が移転すると考えるのが、176条の定める
(①形式主義②意思主義③表示主義)に合致する。
そのため、中古のテレビの所有者は、盗まれた時点においては、
(①A②B③C④D)であった。
従って、Bとしては、
(①所有権②占有権)
に基づいて引渡しを請求することが考えられる。
もっとも、その後Eが、善意無過失でテレビを購入しており、Eが所有権を即時取得したものとみられる。
仮にEが即時取得により所有権を取得した場合、Bは反射的に所有権を失うこととなり、Bの引渡し請求は認められないため、この点を明らかにする必要がある。
民法193条は、盗品の場合は、例外的に被害者は二年間回復請求できる旨定められている。
この193条が規定しているのは、一度Eが取得した所有権がまたBのもとに帰ってくるということではない(、と判例は解している)。
Eが即時取得の要件を満たしても、対象物が盗品である場には2年間例外的に、Bがずっと所有権を有したままであることを定めているのである。
そのため、193条の存在により、Bは、所有権に基づくテレビの引渡しを請求することができることになる。
なお、(所有権に基づく引渡し請求ができる以上、必要ないが、)Bは193条にさだめられている回復請求はできないことに注意すべきである。
これはどういうことかというと、193条の回復請求は、「被害者」が主体だが、所有権は元の所有者に帰属しているままなので、所有者に被害はなく、「被害者」とは、占有を有していたが失った者のみをいう。
そのため、本問で言えば、間接占有者Aや直接占有者Cは含まれるが、Bは含まれないのである。
まとめると、193条に基づく権利は認められないが、193条が前提としている考え方を援用することによって、Bは所有権に基づく引渡し請求ができるのである。
ちなみに、これは余談であるが、間接占有者Aや直接占有者Cは、Eに対して200条1項に基づく占有回収の訴えをすることが考えられるが、Eは善意であるため、200条2項によりかかる訴えは認められない。
結局、A及びCは、193条の回復請求としてのみ引渡しを請求することができる。
(解答)
②②①
・3問20点。均等配点。小数点第一位四捨五入。