問題:(司法試験平成8年度第1問改題)Aは、Bに自己が有していた甲建物を売却したが、Bへの所有権移転登記を経由する前に、甲建物はCの放火により全焼した。Aの所有権侵害を理由とする損害賠償請求は認められるか。理由と結論を40字程度で記述しなさい。
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本問は、出題の趣旨さえ見抜くことができれば簡単である。出題の趣旨は、所有権の移転時期である。
甲建物の所有者は、Cの放火によって、自己の財産を侵害されており、
(①事務管理②契約③不当利得④不法行為)
に基づく損害賠償請求権を取得する。これが、所有権侵害を理由とする賠償請求の条文上の位置づけである。
では、甲建物の所有者とは、ABのいずれであろうか。
この点、176条は、
(①意思表示②登記③登記又は登録④意思の合致)
のみで物権の設定および移転の効力が生ずるとしている。
とすれば、特定物の所有権の移転時期も登記の具備を待たずに、意思表示がなされた契約成立時に求めるべきである。
従って、ABの契約成立時に既に甲建物の所有権はBに移転しており、登記を具備していなくとも、所有者はBであることとなる。
そしてもちろん、放火魔Cは、正当な利益を有しないため「第三者」ではなく、Bは所有者であることを登記なくCに主張できる。
従って、Aは所有権を有していないため、賠償請求できず、Bは所有権を有しているため、賠償請求できる。
(解答)
④①
・2問20点。均等配点。