問題:(完全オリジナル問題)車のディーラーAは、Bとの間で中古車の売買契約を締結した。Aは売買契約の履行として、車を自己の下に取り寄せたうえで、使用可能な状態にし、Bにいつでも引渡しが可能であることを伝えた。ところが、Bは、Aに契約金は既に支払っているものの、仕事が忙しいため、中古車を受け取ることを1か月間拒み続けている。Aとしては、このまま不明瞭な法律関係が継続するくらいなら、債務不履行を理由に契約を解除してAに契約金を返還した上で、他の人に中古車を売ることを考えている。このようなAの主張は認められるだろうか。理由と結論を40字程度で記述しなさい。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
Aとしては、仮にBが契約金を支払っていないのであれば、代金債務の不履行を理由として解除すればよい。
ところが、本問のBは既に自己の代金債務は履行済みである。それなのに、BがAの中古車引渡し債務の履行を受領してくれないため、Aがいつまで経っても履行を完了できないという状況である。
そこで問題となるのが、Bに車を受領すべき義務を設定し、Bの受領遅滞は債務不履行であるから解除するという構成を採ることができるか否かである。
この点、弁済が債務者・債権者の協力行為であると考えると、解除することは
(①できる②できない)という結論につながる。
もっとも、判例は、債権者は文字通り権利を持っているにすぎない(義務を負っている訳ではない)と考えるため、解除することは
(①できる②できない)という結論を採っている。
ちなみに、判例の立場(法定責任説)からは、413条にある「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないときは、その債権者は、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う」という条文の「遅滞の責任」とは、提供の効果を裏から規定したものにすぎないと読むことになる。
当然、このような判例の立場を前提としても、当事者が受領義務を特約で設定することは可能だが、本問においてAB間でそのような特約が設定されたという事情はない。
また、1か月間受領できる状況にないことは、通常ありうることであり、信義則に照らして考察したとしても、この事情のみを信義則上の受領義務を肯定するまでの事情とまでは評価できない。
よって、債務不履行と評価できる事情が未だ存在しないため、Aは解除できない。
(解答)
①②
・2問20点。均等配点。