問題:(完全オリジナル問題)Aは、Bに騙されて自己の所有していた甲土地をBに譲渡し、その登記も経由した。その後、Aは詐欺にかかっていたことに気づき、AB間の契約を取り消したが、その後Bは登記が自己のもとにあることを利用し、甲土地をCに転売し、所有権移転登記も経由した。Aは、Cから甲土地を取り戻すことができるだろうか。理由と結論を40字程度で記述しなさい。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
まず、本問でなにより大事なのは、状況を正確に分析することである。
詐欺を理由にAが売買契約を取り消した時点と、第三者Cが利害関係に入ってきた時点とを比べると、本問は、
(①取消前の第三者②取消後の第三者)
としてのCが登場している局面であることが分かる。
さて、96条1項は、「詐欺」「による意思表示は、取り消すことができる」としながら、96条3項は、その取消しは、「善意の第三者に対抗することができない」と定めている。
96条3項は、意思表示が取り消された場合、取消しには遡及効がある(121条)ことから、意思表示後取消しまでの間に新たに利害関係を持った者が、急に最初から意思表示がなかったことにされると可哀そうだから保護するという規定である。
こう考えると、96条で保護される第三者というのは、取消前の第三者に限られる。なぜなら、取消後の第三者は、意思表示が取り消された状態を前提に利害関係に入ってきた者であり、上述の文脈からは保護する必要のない者だからである。
では、取消後の第三者には、96条3項が適用されないとして、どのように処理すればよいか。
一つの処理の仕方は、取消後の第三者は、結局無権利者からの譲受人であるため、原則としては、保護しないが、94条2項類推適用ないし、96条3項類推適用により、一定の場合に取消後の第三者の保護を図ることである。
しかし、判例は、そのような処理はせず、取消しに遡及効があるのは法的な擬制にすぎず、取り消されるまでは取り消しうる行為も有効であることから、取消しという行為によってあたかも所有権が復帰したかのように扱うことができるため、
本問でいえばAの取消しによって、Bを起点としたAとCへの二重譲渡があったものと同様であると考え、対抗問題として処理し、
(①登記②通知③意思表示④契約締結)
の先後で優劣を決するという考え方を採用した。
そして、本問では、Cは既に登記を具備しているため、Aは登記を具備できず、自己が所有権を取得したことを第三者Cには、対抗できないこととなる。
(解答)
②①
・2問20点。均等配点。