問題:(完全オリジナル問題)A会社の従業員Bは、休日に、「Aとうふ店」という印刷が施されているA会社の車を勝手に持ち出してドライブをしていた。そのドライブ中に、Bはスピードを出しすぎた事から、ブレーキが遅れ、Cを轢いて怪我をさせてしまった。Cは、Bに不法行為に基づく損害賠償請求をすると同時にA会社に対しても使用者責任を追及しようと考えている。ところで、使用者責任が肯定されるためには、Bの行為が「事業の執行について」なされたものであると評価されることが必要である。CのA会社への使用者責任の追及は認められるだろうか。理由と結論を40字程度で記述しなさい。ただし、この「事業の執行について」以外の使用者責任の要件を満たしている事は前提として良い。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
「事業の執行について」という文言解釈が問題となっている。問題文にヒントとしてわざわざこの文言を明示したので、論点は容易に把握できたと思う。
「事業の執行について」という文言は、被用者の行為の中でもいかなる範囲を指し示す言葉なのであろうか。
争いがないのは、他の法律上用いられている行為の範囲を指し示す言葉と比較すると、「○○について」というのは、「○○の為に」よりは広いが「○○に際して」よりは狭いということである。
これだけでは、被用者の具体的な行為が、「事業の執行について」という言葉の射程に入っているか否かが不明であるので、判例の考え方を見ていくことにする。
判例は、「事業の執行について」というのは、(被用者の職務執行行為が含まれるのはもちろんのこと、)被用者の職務執行行為そのものには属しないが、その行為の
(①実質的意義②社会的意義③外形④意図)
から観察して、あたかも被用者の職務の範囲内の行為に属するものとみられる場合をも包含する、と判示している。
行為の外形から観察するその手法は外形理論と呼ばれている。
この外形理論からすれば、休日とはいえ「Aとうふ店」という印刷がされた車の従業員による運転行為は、職務の範囲内の行為と評価することになるため、本問においては「事業の執行について」という要件充足性が肯定できることになる。
そして、従業員Bの過失による不法行為の存在やAB間の使用関係、Cの生理的機能という法的利益侵害、通院費等の損害、因果関係等その他の要件も満たすと考えられるため、A会社の使用者責任は認められうる。
なお、学説は使用者責任が問題となる類型を取引行為的不法行為、事実行為的不法行為の2つに分類して責任を分析する手法が通説といっても良いが、判例は未だその立場を採用したとはいえない。
ただし、本問のような自動車事故型の事実行為的不法行為の事例ではなく、従業員が客ともめて客に暴行したような暴行型の事実行為的不法行為の事例であれば、判例は、「事業の執行行為について」を判断するにあたって事業の執行行為との密接関連性を基準としており、
この密接関連性と外形理論との関係(原則例外関係なのか、包含関係なのか)は未だ不明という状況なので、暴行型の事実行為的不法行為が問題となっている事案の判例の立場が問題となった場合だけは、外形理論に触れず、密接関連性のみを問題とするのが無難であるといえる。
(解答)
③
・1問20点。