麹町中学内申書事件(最判昭和63・7・15、百選38事件)
[事実の概要]
原告は、東京都千代田区立麴町中学校を卒業した者で、被告は、千代田区及び東京都である。
―――原告の中学時代―――
文化祭粉砕だ~!我々は麹町中全共闘だ~!
(校長)
ぐぬぬ・・・
―――原告の卒業時―――
(校長)
「原告は、麹町中全共闘を名乗り、ビラを撒いたり、落書したりしていました!」。事実だもんね、別に内申書に書いてもいいよね!別に今までの仕返しって訳じゃないけどね!
この内申書の記載のせいであるかは明らかではないが、原告は受験した高校のほぼすべてにおいて不合格となった。
また、
―――卒業式―――
(校長)
原告は、卒業式に出席させないと決めました。
出席させないなんてさせない!無理矢理行ってやる!
(校長)
(ククク・・・やはり、来おったか若いのう・・・いや、別に私が若くないという意味ではないんじゃが・・・)
取り押さえろ!教室の中に閉じ込めておけ!
ハァ、捕まっちゃった・・・
もう諦めたから帰ってもいい?
(校長)
卒業式終わるまで待っていなさい!
・・・こうして、卒業式が終わるまでの間、教員らによって、教室内に閉じ込められていた。
[訴訟上の主張]
被告は、300万円と利息を支払ってね
あと、仮執行判決もちょ~だい
え、わ、私ですか・・・
(今まで一度も出てきてなかったのに・・・)
原告の主張は、
被告が、原告の高等学校進学を妨害する意図をもって、
調査書(内申書)に概略、「この生徒は二年生のとき、麹町中全共闘を名乗り、機関紙砦を発行しはじめ、過激な学生運動に参加しはじめる。九月一三日、本校文化祭会場に他校の生徒十数名と共謀して裏門を乗り越え、ヘルメット、覆面、竹竿を持って乱入し、ビラをまいたが麹町署員に逮捕(補導)された。その後も過激な政治団体と関連をもち、集会、デモにたびたび参加し、学校内においてもいっこうに指導に従う様子がなく、現在手をやいている。」旨を記載したり、
出欠の記録欄中の欠席の主な理由欄に「風邪、発熱、集会(又はデモ)に参加して疲労のため」との記載をしたりして、
原告は、本件各不法行為を受けた当時、一五歳の感受性の鋭い少年であり、豊かな未来を保証されていたところ、高等学校進学妨害の不法行為により、憲法上保障された思想、信条の自由を侵害され、教育を受ける機会を奪われた、という構成である。
また、卒業式の参加を妨害され、身体活動の自由を奪われた点についても、
「卒業式の分離挙行及び卒業式当日の逮捕、監禁、暴行の不法行為により、精神的、肉体的に多大な苦痛を被った。」とした。
進学妨害により、150万円、監禁行為等により150万円を下らない損害を受けたと計300万円を主張した訳である。ちなみに、この訴訟は、国家賠償訴訟である。
[訴訟経過]
第1審判決(東京地判昭和54・3・28):
被告は、原告に対し、各自金200万円及び利息を支払え。
原告のその余の請求をいずれも棄却する。
この判決は、原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。
控訴審判決(東京高判昭和57・5・19):原告の請求棄却。原告敗訴。
第一審判決においては、原告の主張を認め、調査書の作成提出行為について、150万円、身体拘束等の加害行為関係については、50万円の損害と認定し、計200万円支払えという主文になった。
[判示内容]
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
① 内申書作成提出行為
「原審の適法に認定したところによると、本件調査書の備考欄及び特記事項欄にはおおむね「校内において麹町中全共闘を名乗り、機関紙『砦』を発行した。学校文化祭の際、文化祭粉砕を叫んで他校生徒と共に校内に乱入し、ビラまきを行った。大学生ML派の集会に参加している。学校側の指導説得をきかないで、ビラを配ったり、落書をした。」との記載が、欠席の主な理由欄には「風邪、発熱、集会又はデモに参加して疲労のため」という趣旨の記載がされていたというのであるが、右のいずれの記載も、上告人の思想、信条そのものを記載したものでないことは明らかであり、右の記載に係る外部的行為によっては上告人の思想、信条を了知し得るものではないし、また、上告人の思想、信条自体を高等学校の入学者選抜の資料に供したものとは到底解することができないから、所論違憲の主張は、その前提を欠き、採用できない。」
② 卒業式への出席不許可
「所論は、本件において、上告人が卒業生全員の卒業式に出席することによって、卒業式の教育的意義を没却する事態が生ずるという蓋然性を予測することができなかったことを前提として、憲法二六条、学校教育法四〇条、二八条三項違反を主張するものであるところ、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人を卒業生全員の卒業式に出席させれば卒業式に混乱を生じさせるおそれがあったとする原審の判断は、正当として是認することができるのであって、所論のいう蓋然性を予測することができたものというべきであるから、所論は、その前提を欠き、採用することができない。」
[コメント&他サイト紹介]
事案の概要について、興味をもって貰いやすいように、少し事案を崩してみました。正確性がかなり犠牲になるのが、不安なところですね。分かりやすさと正確性のいずれに重きを置くかは、今後も課題となり続ける予感がいたします。
他サイト様は、あまり詳しくこの判例を分析されたものは見あたらなかったのですが、
麹町中学内申書事件検定なるものを見つけました。なんてマニアックなんだ・・・