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髪型規制(百選23事件)


髪型の規制(熊本地判昭和601113、百選23事件)

 

 

[事実の概要]

 

原告は、玉東中学校の元学生及びその父母、被告は、玉東中学校長や玉東町である。

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男子はみ~んな丸刈!長い髪は、ダメ!

今日から校則でそうなったからね!

 

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え!な、なんで!?

 

 

 

yumi3

 

丸刈は、地域の人に良い印象を与えるから、人間関係が円滑になる!それに、長い髪を認めると、朝のお手入れに時間がかかるから、遅刻が増えたり、授業中に髪が気になって授業に集中できなくなっちゃうだろ!

 

 

 

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あと、ワックスつけたら、教室内に異臭が漂っちゃうよね!

 

 

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そ、それなら仕方ないよね・・・ってやかましいわ!何だその屁理屈!こんな校則認められるか!

 

 

 

[訴訟上の主張]

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玉東町は、私に10万円払ってください

あと、玉東中学校長が定めた「丸刈、長髪禁止」という校則は無効であることを確認してね

あとあと、校則に従わなかった事を理由としていかなる不利益もしないと約束してね

 

原告が、10万円を請求した根拠は、

玉東中学校が本件校則を定めた事により、それに反対する原告がいじめの対象となったり、全校生徒の前で校長から笑いものにされたり、いたずら電話に悩まされたりした事を理由として、精神的損害を被ったというものである。

 

また、校則が無効である事の法律構成としては、

 

①本件校則は、男子生徒の髪の長さについて、女子生徒に許容されている長さの10分の1程度の長さまでしか認めていないから、性別による差別にあたる。

②本件校則は、頭髪という身体の一部について法定の手続によることなく切除を強制するものであるから、憲法31条に違反する。

③本件校則は、個人の感性、美的感覚あるいは思想の表現である髪形の自由を侵害するものであるから憲法21条に違反する。

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私は、「長いものに巻かれてしまうのは人間のクズだ。」「日和見主義者にはならない。」といった権力に対するいわゆる抵抗思想を表現するため現在の髪形を維持しております。

 

yumi14

 

 

お、おう・・・(け、喧嘩を売る相手を間違えたか・・・!?)

 

 

 

 

・・・であるから、違憲ゆえに校則は無効であるという構成である。

 

[訴訟経過]

 

なし(本判決が地裁判決なので)

 

[判示内容]

 

主   文

 

原告らの被告玉東中学校長に対する訴をいずれも却下する。

原告aの被告玉東町に対する請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

 

理   由

 

校長に対する訴え(本件校則の無効確認訴訟が中心)は、

原告が、既に中学を卒業しており、中学の校則に関する無効確認訴訟についての原告適格あるいは訴えの利益を有しないとして、却下されている。

 

玉東町に対する訴え(10万円の請求)は、

原告の、不法行為に基づく損害賠償請求における「違法性」に関する違憲(14条、21条、31条違反)ゆえに違法という主張に対して、次のような判断を示している。

 

     14条違反について

 

「原告らは、本件校則は、髪の長さについて女子生徒と、男子生徒とで異なる規定をおいているから、性別による差別であると主張するが、男性と女性とでは髪形について異なる慣習があり、いわゆる坊主刈については、男子にのみその習慣があることは公知の事実であるから、髪形につき男子生徒と女子生徒で異なる規定をおいたとしても、合理的な差別であって、憲法一四条には違反しない」

 

     31条違反について

 

「原告らは、本件校則は頭髪という身体の一部について法定の手続によることなく切除を強制するものであるから、憲法三一条に違反すると主張するが、成立に争いのない乙第三号証及び被告校長本人尋問の結果によれば、本件校則には、本件校則に従わない場合に強制的に頭髪を切除する旨の規定はなく、かつ、本件校則に従わないからといつて強制的に切除することは予定していなかつたのであるから、右憲法違反の主張は前提を欠く

 

     21条違反について

 

「原告らは、本件校則は、個人の感性、美的感覚あるいは思想の表現である髪形の自由を侵害するものであるから憲法二一条に違反すると主張するが、髪形が思想等の表現であるとは特殊な場合を除き、見ることはできず、特に中学生において髪形が思想等の表現であると見られる場合は極めて希有であるから、本件校則は、憲法二一条に違反しない」

 

[コメント&他サイト紹介]

 

原告の、「質実剛健の気風と頭髪とは何の関係もない」、「質実剛健の原点ともいうべき古武士の髪型が超長髪であったという一時を見ても、丸刈を強制する合理性はない」という主張は、なるほど!と思わせる主張でした。

本判決は、本件校則について違憲でも裁量権の濫用でもないと判断していますが、他方で、「本件校則はその教育上の効果については多分に疑問の余地がある」としています。まぁ、もうそんな時代ではないって事ですよね。

 

憲法判例解説様の、

http://ameblo.jp/ut-liberi-esse-possimus/entry-10255068882.html

・・・この記事は、この判例の事案を丁寧に拾っておられます。そうなんですよ。事案を丁寧に見たら、私が上でキャラでやや遊んだ場所は、絶対ネタにしたくなるんですよ。

 

これは、少しレベルが高いですが、「弁護士会人権救済申し立て応援投稿」に、

http://akegon.web.fc2.com/toko.html

・・・という記事がありまして、要件事実から丁寧に事案を分析して下さっています。しかし、タイトルを見てお分かりになると思いますが、特定の意見を表明する手段として判例を分析しているという点は、注意して見る必要がありますね。

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