不法原因給付と詐欺罪(最判昭和25・7・4、百選(第6版)44事件、百選(第7版)46事件)
[事実の概要]
被告人らは、
第一、昭和23年2月1日頃Aらと共謀してB方でB人に対し、かねてBから代金15万円余で買受ける契約をしていた木蝋300斤の残代金13万円であると言って、弁当箱一個の上に100円札で現金2万円を重ねたものを風呂敷包として残代金13万円の包みであるように装いBに渡し、Bをして真実右残代金の支払を受けるものと誤信させ、よって即時同所で同人から右木蝋300斤の交付を受け、
第二、同年4月12日頃第1審相被告人C及び同D等と共謀してE方でEに対し、かねてEから代金54万円で買受ける契約をしていた綿糸一梱半の残代金52万円が入っているように装って、2個の鞄の内1個には現金25万円を入れ、他の1個には古雑誌15冊を入れたものをEに渡し、Eをして真実右残代金の支払を受けるものと誤信させ、よって即時同所でEから右綿糸一個半の交付を受け、
以て、いずれもこれを騙取した。
[裁判上の主張]
検察側は、
被告人らの行為はいずれも詐欺罪(刑法246条1項)にあたると主張した。
弁護側は、上告理由において、
闇取引については取引当事者の財産的利益は刑法の対象にはならないものであるから、原判決は刑法の放任した範囲に法の効力を及ぼした違法がある、と主張した。
[訴訟経過]
第1審判決:不明
高裁判決(大阪高判昭和24・9・27):被告人等を各懲役一年に処する。
高裁判決は、淡々と認定しているだけで、さして見るべきところはない。
[判示内容]
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護側の主張(=フフフ・・・闇のゲームの始まりさ)に対して、
「詐欺罪の如く他人の財産権の侵害を本質とする犯罪が、処罰されたのは単に被害者の財産権の保護のみにあるのではなく、かかる違法な手段による行為は社会の秩序をみだす危険があるからである、そして社会秩序をみだす点においては所謂闇取引の際に行われた欺罔手段でも通常の取引の場合となんら異なるところはない。」
「従って、闇取引として経済統制法規によって処罰される行為であるとしても相手方を欺罔する方法即ち社会秩序をみだすような手段を以て相手方の占有する財物を交付せしめて財産権を侵害した以上被告人の行為が刑法の適用を免れる理由はないから論旨は採用できない。」
[コメント&他サイト紹介]
「闇取引は・・・(キリッ」なんてキャラに言わせたかったんですけどね。刑法判例解説は、一切キャラを登場させないという方針から泣く泣くあきらめました。まぁ、その分、文章中1か所遊んじゃいましたが。
この論点については、以上の判例の紹介によっては、充分に把握できないと思います。
そこで、私自身が「法・税・会計研究室」という別サイトにおいて書いた記事である、
・・・を僭越ながらおススメさせて頂きます。一応、複数の論文を見た上で本記事を書いた時点から遡ること2年くらい前に書いたものです。