問題:作家Yに雇用されている秘書Aは、Y名義で5万円以下のYの日用品を購入する権限しか付与されていなかったが、Yに無断でXからYのために50万円相当の事務機器を購入した。しかし、Xは、Aに事務機器を購入する権限があるものと信じて取引をし、Yに代金の支払いを請求したところ、Yはその支払いを拒絶した。このようなYの支払い拒絶を不当と考えたXは、Yに対して、支払いの請求、およびそれに代わる請求について検討した。この場合において、Xは、どのような根拠に基づき、いかなる請求をすればよいか。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
問題文によると、Xは、「支払いの請求」と「それに代わる請求」を主張するわけであるが、まず「支払いの請求」の根拠を考えていく。
Yは、秘書Aに代理権を授与していたが、それは5万円以下の範囲に限定されていたため、XとAが締結した50万円相当の事務機器の売買契約にはその代理権は及ばない。
つまり、AがたとえYの為に契約する旨を顕名していたとしても、無権代理行為であるので、Yには原則としてXA間の売買契約の効果は帰属しない。
そこで、Xとしては、Yに売買契約の追認(民法113条1項)を求めるか、表見代理を主張することで、Yへの効果帰属を主張することとなる。
しかし、Yは既に代金支払いを拒絶しており、これは追認拒絶にあたるため、既に追認を求める余地はない。
そこで、Yとしては、「支払いの請求」をするためには、表見代理の主張をするほかはない。
今回の事案は、秘書Aが代理権は授与されているが、権限の範囲を超えて契約してきた事例であるので、
(①109条の代理権授与表示による②110条の権限外の③112条の代理権消滅後の)表見代理の問題である。
表見代理の成立を前提にすれば、XはYに、売買契約の履行を主張できるため、代金支払請求ができることとなる。
次に、「それに代わる請求」を考える。
契約法においては、AではなくYに対して主張する手段はもう存在しないため、今回の事例を踏まえると、
(①不当利得法②事務管理法③不法行為法④親族法)の分野の問題だとあたりをつける。
事務管理と親族は的外れである。Yには「利得」が存在しないため、不当利得の問題でもない。これが秘書AのXに対する不法行為ではないか、と思いつくことが第一歩である。
そして、秘書AはYに雇用されているので、AにとってYは雇用主である。そのため、Xは、
(①土地工作物に関する責任②使用者責任③被用者責任④注文者責任)
をYに対して追及することが考えられる。
よって、Xは、715条の要件充足を主張し、使用者責任に基づく損害賠償請求をYに対してなすこととなる。
(解答)
②③②
・3問20点。均等配点。小数点第一位を四捨五入