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自益権とは(3/20)


 

kaisha21

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(マンガ : まんがで気軽に経営用語 様)

 

教育マンガとして、素敵な内容でしたね。

会社法上、株式会社の株主に認められている権利はたくさんありますが、それらの権利は、「権利を行使する株主のみが利益を受けるもの」と「権利を行使する株主以外の株主も利益を受け得るもの」とに分類することができます。

そして、会社法学は、前者を自益権と総称し、後者を共益権と総称しています。

 

かつては、自益権は「株主が自らの利益の為に行使できる『権利』(=株主が社員の資格として有する権利)」で、共益権は「株主が会社のために行使すべき『権限』(=株主が会社の機関としての資格で有するに過ぎない権限)」である等という区別がなされることもありましたが、現在ではその議論はほとんど克服されています。

すなわち、自益権も共益権も『権利』であり、株主は自らの利益のために行使できるのです。ただ、その権利行使の結果として、自分だけが利益を得るのか、他の株主も利益を得る可能性があるのかで、自益権と共益権は分類されるのです。

このような現在の考え方からは、自益権と共益権とを区別する実益はさほどなく、共益権の方が他の株主の利益にも影響することがあるのでより制約されうる、ということがざっくりと言える程度なのです。

また、(一般には共益権とされている質問権や帳簿閲覧権は、実は利益を得ているのは権利行使した本人だけと言えない事もないため)自益権と共益権との区別が曖昧になってきているという指摘もあります。

 

さて、では自益権の説明に入ります。

自益権は、株主が会社から直接経済的利益を受けることを目的とする権利と一般に定義されています。

何故、「経済的利益」に限定されているかと言えば、単純な話で、会社法上株主に生じ得る利益の中で、「権利を行使する株主のみが受け得る利益」は基本的には「経済的利益」しかないからです。

 

自益権の具体的な内容を見てみましょう。

自益権の中でも一番重要なのは、やはり剰余金の配当を受ける権利(会社法105条1項1号)です。会社の業績が良いときにお金(=配当)を貰える権利ですね。

その次に重要なのは、残余財産の分配を受ける権利(会社法105条1項2号)です。会社が倒産しちゃった時に、会社が借金を全部返し終わった後に残った財産(=残余財産)を株主の皆で分け分けしよっか、という権利です。もちろん会社が解散したケースですから、残余財産なんて無い場合の方が多いです。そんな場合には、この権利は絵に描いた餅です。

あとは、会社法上、一定の場合に認められる株式買取請求権(=株主が会社に対し、株式を公正な価格で買い取ることを請求できる権利。会社法116条、469条等参照)も、株主自身のためだけの権利ですから自益権に分類されます。

 

これで、自益権についてざぁ~っと概観できたように思います。

 

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(もう一歩前へ)

 

せっかくですので、会社法105条を見ておきましょう。とても重要な条文です。

 

第105条

1項  株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。

 1号  剰余金の配当を受ける権利

 2号  残余財産の分配を受ける権利

 3号  株主総会における議決権

2項  株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。

 

105条1項の1号と2号が、自益権の中でも最も重要な二つの権利でしたね?

3号の議決権は、共益権の中でも最も重要な権利です。ただし、これは別途共益権の記事で取り上げましょう。

今回のコーナーでもう少しだけ掘り下げようとしているのは、105条1項1号の剰余金の配当を受ける権利です。

 

どこかの会社の株主になられた事のある方なら分かると思うのですが、この権利って変な権利じゃありませんか?

剰余金の配当を受ける権利といっても、株主からアクションを起こして、今期の業績すごく良かったから内部留保に回さずに配当寄こせ!と請求できるわけではないのです。

会社の経営陣が配当するぞって決め、株主総会の決議(一定の場合には取締役会の決議)で配当に関する事項を決議して初めて、株主に「決議の内容に従った分の配当寄こせ!」と請求できる具体的な権利が生まれるのです(会社法454条、459条)。

 

もちろん、だからといって、株主としては、配当というインカムゲインが仮に得られなくても、内部留保に回る事によってキャピタルゲインが得られる訳ですから、株主が損をしているというお話ではありません。(インカムゲインを得るかキャピタルゲインを得るかについての、その局面局面における選択権が無いのですから、短期的には損をする可能性があると表現する事も可能かもしれませんが。)

そうではなくて、105条1項1号の剰余金の配当を受ける権利というのは、(具体的な配当の決議が無い限り)会社に請求できる訳でもない、名ばかりのふわふわした権利だという事が言いたかったのです。

この剰余金の配当を求める権利の、ふわふわした権利である、という特徴を、難しい言葉で言うと、権利内容の未確定性を有する、と表現されています。

大切な特徴ですので、是非覚えておいてくださいね。

以上で終わりますね。

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