(マンガ:まんがで気軽に経営用語 様)
・・・良いマンガでした。合名会社のエッセンスが詰め込まれていましたね。
合名会社というのは、持分会社の一種で、無限責任社員のみで構成される会社です(会社法576条2項)。
「名」は、名板貸しを想像して頂ければ分かるように、時に責任の所在を言い表す言葉です。一人一人の「名」を「合」わせた会社、という字面から合名会社の社員は全員「無限責任」を負うという「合名会社」の特徴を覚えちゃってくださいね。
ざっくりこの会社の特徴を言えば、社員一人一人がとっても大事な会社なのです。
合名会社の社員は、(定款に別段の定めをしない限り、)「全員」が業務執行を担当する上、会社を代表できます(法590条1項、599条1項)。
そして、会社が債務を負った場合は、社員は「全員」、会社債権者に対して直接、「無限」の連帯責任を負うことになります(法580条1項)。
つまり、会社が金を返せないのであれば、社員「全員」の現在有する全財産(及びその後の人生)でもって、お金を返さなければならない、ということです。
ということは、ですよ?
他の「社員」が会社を「代表」して業務執行した結果、会社が多額の借金を負ったら、自分がヘマした訳じゃないのに、自分の人生が終了する、ということです。
これは、他の「社員」との間に、よほどの信頼関係がないとできませんよね?
このように、社員相互の関係が深く、個性が重視される仕組みとなっている合名会社の特徴を「人的会社」と言います。
この対義語は、社員相互に信頼関係は無く、個性が重視されない仕組みである「物的会社」です。典型例は、株式会社です。
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(もう一歩前へ)
(人的会社の典型である)合名会社の具体的な特徴について、(物的会社の典型である)株式会社と比較しながら説明していきましょう。
(1)会社の設立
株式会社においては、間接有限責任であるがゆえに、資本がきちんと入り、それが維持されることがとても大事です(この意味が分からない方は、「金庫株(自己株式)」という記事で一から説明しておりますので、ご一読ください)。
ですので、株式会社の設立においては、きちんと額面通りの「資本」が会社に入ってくることを重視し、出資は「金銭」によるのが原則で、「金銭以外の財産による現物出資」は、変態設立事項として定款に所定の事項を記載しなければ効力が生じないことになっていますし、「財産以外の方法による出資」は認められていません(会社法28条1項1号、34条1項参照)。
また、出資の履行を会社が成立する前に、絶対行わせるため、「定款の作成」だけでは株主は確定せず、出資の履行を完了しなければ「株主」になれない、という社員の確定の手続(株主となる権利の喪失の手続)を設けています(会社法34条、36条)。
合名会社においては、社員が全員無限責任を負いますので、会社債権者は、会社「資本」の充実・維持にそこまで関心はないです。「資本」が「会社」から「社員」に払い戻されたところで、どうせその「社員」の全財産からお金を取れるからです。そこで、出資は、「金銭」や「金銭以外の財産による現物出資」はもちろん、「財産以外の方法による出資」ですら認められています。マンガにもありましたように「労務」による出資や、「信用」による出資すら認められているのです(会社法576条1項6号かっこ書き反対解釈)。
もっとも、出資したものや、その評価額等を「定款」に記載する必要はあります。
また、出資の履行は、会社が成立した後に為す事も許されています。何度もいいますが、会社債権者は、「資本」の充実にそこまで関心がなく、「資本」に関する法規制を厳しくする理由がないからです。
(2)地位の譲渡、持分の払戻し
合名会社においては、社員一人一人が大事なので、新たな社員が登場するような場合(=社員の地位の全部又は一部の譲渡)は、他の全社員の承諾が必要とされています(法585条1項)。その反面、何度も申しますが「資本」維持の要請はないため、社員が退社すること(=持分の払戻し)は、容易にできるようになっています(法611条)。
これって株式会社とは正反対だって気づかれたでしょうか?
株式会社においては、資本維持の原則に反するため、出資の払戻しは、原則的には認められない一方、株主は、投下資本をいつでも回収できるように、株主の地位をいつでも他人に譲渡できるという株式譲渡自由の原則が定められていたのでしたよね?(もしこの点を理解されていないのであれば、「金庫株(自己株式)」をご一読下さい)
「出資(持分)の払戻しは自由にできるか」、「地位の譲渡を自由にできるか」という点で真逆であることにご留意ください。
・・・このほかにも、定款による自治が合名会社の方がより広く認められている、というような違いもあったりしますが、合名会社の特徴として重要なのは上述の二点です。