(マンガ:まんがで気軽に経営用語 様)
・・・何もかもが軽い会社ですね(笑)
執行役は、委員会設置会社に置かれる業務執行を担当する役員さんです。
委員会設置会社というのは、基本的にはグローバル企業が採用する会社形態で、「取締役会」の業務執行者に対する監視監督機能をパワーアップする代わりに、「監査役」や「監査役会」を置かないようにした会社です。
そして、この「取締役会」が、業務執行を担当する「執行役」を選任・解任します(会社法402条2項、403条1項)。
ここに、委員会設置会社の業務執行監視システムの哲学があります。
フツーの会社で業務執行を担当しているのは基本的には「取締役」ですよね?
そして、その「取締役」を選任・解任するのは、「株主総会」です(法329条1項)。
しかし、「株主総会」は経営の素人の集団ですので、よほど小さな会社でない限り、監視監督は期待できません。
そこで、経営陣からは独立した地位が保障されたお目付け役として、「監査役」が設置されたのでした。これがフツーの会社の業務執行監視システムです。
これは、「取締役」ではなく、「代表取締役」や「業務執行取締役」が業務執行を担当する取締役会設置会社においても異なるところはありません。
「取締役会」は、業務執行側の機関として位置付けられており、せいぜい出来ることと言えば、「代表取締役」や「業務執行取締役」の代表権・業務執行権を奪うことくらいだからです。
これに対して、委員会設置会社においては、業務執行を「取締役」ではなく、「執行役」のみが出来ることとし(法415条、418条。ただし、取締役が執行役を兼ねることはできる(法402条6項))、「取締役会」がその「執行役」に対して選任・解任権を有することを最大の武器として、業務執行を監視する、というシステムになっている訳です。
実際に監査を担うのは(「取締役会」の決議で選ばれた委員で構成される)「監査委員会」ですが、大きな哲学としては、このようになっています。
国家組織に例えるなら、「監査役」による業務の適法性の監視は、「裁判所」による監視であるのに対し、委員会設置会社における「取締役会」による監視は、(内閣不信任決議によって内閣総辞職させる権利を背景とした)「国会」による監視である、と例えることができます。
「執行役」は、業務執行を担当する役員さんなのですが、それだけ覚えてもあまり意味はなく、「執行役」が、委員会設置会社のシステムの中でいかに位置付けられているかを知る事こそが大切なのだと思います。
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(もう一歩前へ)
マンガにもありましたが、執行役と執行役員の違いに軽く触れておきましょう。
執行役は、上述のように、会社法が、委員会設置会社における業務執行担当者として位置付けている者を言うんでしたね。
これに対し、執行役員というのは、会社法の制度ではありません。
執行役員って聞くと何かお偉いさんっぽいですよね?
執行役員制度というのは、業務執行を実際に担当する者のトップに、お偉いさんっぽい肩書を与えるための制度です。
言い方を変えてみます。
経営のトップは、「取締役」です。
この「取締役」は、数に限りがあります。
定款で取締役の員数が定まっているところもありますし、そうでなくとも「取締役」が多すぎると「船頭多くして船山に登る」ということになりかねません。
しかし、他方、上が空かないと幹部候補の方々はやる気が出ません。
そこで、執行役員という、業務執行の意思決定には関与できないけど、業務執行の実務ではお偉いさんなんだぞ、という肩書をつけることで、上が空かない不満を吸収しようとした制度です。
これを別の角度から説明すると、お偉いさんのポストは増やす一方、経営の意思決定をする「取締役」の員数を絞り込むことで、社内に不満を蓄積しない形で、意思決定の迅速化を図った、ということです。
また、これによって、業務執行の意思決定の責任者である「取締役」と、その意思決定に基づく実務の責任者である「執行役員」、という形で(社内での)責任の明確化が図れるという利点もあり、こちらを主目的として執行役員制度を導入する会社もたくさんあるようです。