問題:(司法試験昭和55年度第2問改題)Xの所有する森林は森林法上のA行政庁指定の保安林である。右の森林において、Yの火の不始末により山火事が発生し、所轄のB市の消防署職員Cは、消火活動要請を受けて現場に赴いた。もっとも、既にYによる鎮火後であったため、出火原因の調査及び残り火の点検を行ったうえで帰署した。ところが、同所にわずかな残り火があったため、再度山火事が発生し、森林は消失し、Xは多額の損害を被った。Cは、消防法上の高度な注意義務を負っているが、その違反はなかったものとすると、XはYを除き、誰を相手にしてどのような救済を求めればよいか。40字程度で記述しなさい。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
Xが請求を立てうる相手は、Yに対する民事訴訟は本問では除外するよう求められているので、A行政庁かB市か職員Cである。
Cの残り火の見落としは、「公権力の行使」にあたる公務員として、その職務を行うについてなされたものであるため、国家賠償法1条の要件が満たされるか否かを問わず、CがXに対して直接個人責任を負うことはない。
そして、Cに注意義務違反がない、つまり過失がないことからすると、「過失によって」という国家賠償法1条1項の要件を満たさないため、
(①A行政庁②B市)
という公共団体に代位責任が生じる余地もない。
従って、Xが請求すべき相手方は、A行政庁である。
では、いかなる請求を立てるべきか。A行政庁に、保安林の管理に瑕疵があったと評価する場合は、
(①国家賠償法1条1項②国家賠償法1条2項③国家賠償法2条1項④国家賠償法2条2項)
に着目すべきである。
条文番号なんてわかるか、と思われるかもしれないが、国家賠償法は全部で6条しかなく、その中で特に重要なのは1条1項と2条1項だけなので、これは覚えるべき条文である。
そして、2条1項該当性を考えると、保安林は、直接に公の目的のために供用されている個々の有体物であるため、「公の営造物」ということができ、
残り火が残存している状態は、山火事につながる恐れが十分にあるような危険性の高い状態であるといえるため、「管理の瑕疵」が認められる。
従って、Xは、A行政庁に対して、国家賠償法2条1項により、損害賠償請求できる。
なお、以上の記述では保安林の「管理の瑕疵」であると評価したが、保安林管理義務違反と評価することも可能である。このように評価した場合は、
(①国家賠償法1条1項②国家賠償法1条2項③国家賠償法2条1項④国家賠償法2条2項)
の問題となる。
そのため、Xは、A行政庁に対して、国家賠償法1条1項により、損害賠償請求できるという答えも、1条1項と2条1項の違いを正確に理解しているのであれば正解となる。
(解答)
②③①
・3問20点。均等配点。小数点第一位を四捨五入。