問題:(司法試験昭和58年度第1問改題)A川は、渓谷美で知られており、遠近の人々のレクリエーションの場であった。ところが、B電力会社が水力発電用のダムを建設する目的でA川の占用許可を申請し、C行政庁は、これを許可した。ダムが建設されるとA川付近のA渓谷は、水没することとなる。この場合、A渓谷をレクリエーションの場としている人々を会員として組織されている「A渓谷を守る会」は、ダム設置の反対運動を行っていたが、上記会の会員Dは、占用許可処分の取消訴訟を提起することができるだろうか。ここで問題となるのが、Dに「法律上の利益」が認められるかであるが、判例は行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益」を有する者をいかに定義しているか。40字程度で記述しなさい。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
事例問題ではなく、ただの定義問題である。事例の解決は余談として、この初級レベルの最後に記載する。
本問では、Dに訴えを提起する資格があるのかどうか、主観的利益の有無が問題となっているため、
(①原告適格②訴えの利益③被告適格④処分性)
の問題である。
原告適格は、行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」要件の一部であり、取消訴訟を裁判所に提起する人的な資格をいう。
この「法律上の利益」について、判例は、当該処分により自己の権利若しくは
(①法律上保護された利益②法律上保護に値する利益)
を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう、としている。
以上が今回要求されている答えであるが、判例は上記に続けて、処分を定めた行政法規が、一般的公益として保障するのみならず、個々人の個人的利益としても保護すべき趣旨を含む場合に、
そのような利益も(「法律上の利益」の定義中に出てきた)法律上保護された利益といえるものとしている。
つまり、行政法規が一般的公益のみを保護している場合、例え行政法規によって私人が何らかの利益を得ていてもその利益は、反射的利益にすぎず、その利益に対する行政庁の侵害に対して、原告適格を私人は有さない。
逆に、行政法規が個別的利益をも保護している場合、私人が得ている利益は法律上の利益であるから、原告適格を私人は有するという図式が出来上がるのである。
ここで、行政法規が個別的利益をも保護しているかどうかが、原告適格の有無の実質的な基準となっていることに注意してほしい。
本問の事案はもっと単純で、レクリエーションをする利益は、法令から導き出しうる利益ですらないため、反射的利益にすぎないのは明らかで、「法律上の利益」とはいえない。
従って、Dは原告適格を有しないため、取消訴訟を提起できないというのが、この事例の解決である。
(解答)
①①
・2問20点。均等配点。