問題:(完全オリジナル問題)AからBが甲土地を売買によって取得した。ところが、Bはどうせいずれ息子であるCに相続させることになるのだから、節税しようと考え、BとCが通謀して、AからCに売買がされたように仮装して、AからCに移転登記をした。Cは、自己の下に登記があることを奇貨として、Bを裏切り、このような事情を過失なく全く知らないDに不動産を売却した。この場合、Bとしては、まだ自己に所有権があることを主張しようと考えているが、Dに主張できるか。結論と理由を40字程度で記述しなさい。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
本問は、94条2項の直接適用と類推適用の区別ができているかを問うことが一番大きな出題の趣旨である。
まず、Cは、実際は無権利者であり、Dは、無権利者から譲り受けただけの者であるため、登記に公信力がない日本民法の下においては、無権利の法理から、Dは所有権を取得しないという原則を確認しておく必要がある。
その上で、本問ではBC間で通謀して、あたかもCが所有者であるかのような虚偽の外観を作出していることの帰責性を問題にしていくのである。
さて、本問は、94条2項の
(①直接適用②類推適用)の局面である。
直接適用と答えた人は気を付けてほしい。94条2項は、94条1項が規定する「相手方と通じてした意思表示」が存在する場合にのみ適用される規定である。
そして、本問では、BC間では通謀がなされているが、「相手方」というのは、法律行為の相手方である。そのため、Cは94条1項でいうところの「相手方」ではない。
本問でいえば、AB間で通謀がなされていて初めて、94条1項の通謀虚偽表示といえ、94条2項が直接適用されるのである。(まぁ、所有権移転登記は共同申請ですから、Aも相当怪しいっちゃあ怪しいのですが。)
(①外形自己作出型②外形他人作出型③意思外形非対応型)の問題である。
この区分は、虚偽の外観を作出した人間がどの程度帰責性があるのかを図るために重要な区分である。(虚偽の)外形自己作出型が、帰責性が基本的には一番大きく、外形他人作出型、意思外形非対応型の順番で軽くなっていくのである。
だからこそ、判例は意思外形非対応型においては、外観作出者の帰責性が小さいことに対応して、保護される側の人間の保護されるための要件を善意のみならず無過失も加えて、重くすることでバランスをとっているのである。
本問の解決としては、Bは所有権に基づく明渡請求をDに行ったとしても、Dは94条2項類推適用による所有権取得を主張して、Bに所有権があることを否認できるため、Bは所有権をDに主張できないこととなる。
(解答)
②①
・2問20点。均等配点。