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贈与契約(初級)


問題:(完全オリジナル問題)Aは、日ごろお世話になっており、家族ぐるみの交流のあるBに対し、Bに娘が誕生したことの祝いとして、自らが有しており、玄関に飾っていた日本人形の贈与を約束した。続けて、以後Bの物としてBのために保管しておくから、いつでも取りに来てくるように、と約束した。ところが、次の日、一度贈与すると決めたAであったが、急に日本人形の価値が気になり、質屋で鑑定してもらうことにした。その結果、20万相当の価値を有していることが判明し、Aは贈与を取りやめることを決意した。そして3日後、A宅を訪れたBに対し、贈与を撤回した旨を伝えた。Aに謝意が見られないことにBは激怒し、贈与契約の履行を請求した。Bの主張は認められるか、理由と結論を40字程度で記述しなさい。なお、Aの負う債務は自然債務ではない事を前提として良い。

 

(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)

 

ストーリー仕立ての問題の中から、論点を見抜いてもらうのが出題の趣旨だが、容易だったのではないかと思う。

 

自分が有していた日本人形の価値がまさか20万円だとは思ってなかったことを理由にAが錯誤無効や心裡留保の主張をするとか、本問の贈与は特定物ではなく種類物であると認定する等というような誤った方向に走らないことが重要である。

 

ちなみに、家族ぐるみの付き合いがあった事や日本人形が玄関に置いてあったことは、ABもあの日本人形について、という形で話を進めており、日本人形の贈与が特定物についてなされたことを明らかにするために問題文に書いた事情である。

 

さて、本問ではBの履行請求に対して、Aとしては、550条本文が「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。」と規定していることから、素直に贈与を撤回する事を主張することになる。(抗弁)

 

これに対し、Bとしては、550条但書が「ただし、履行の終わった部分については、この限りでない(=撤回できない)」と規定しており、Bに対して履行がなされていることを主張する。(再抗弁)

 

つまり、ABに対して、Bのために保管しておくことを約束しており、これは

(①現実の引渡し②簡易の引渡し③指図による占有移転④占有改定)

である。

 

そして、Bとしては占有改定による引渡しも550条但書にいう「履行」にあたるとして、Aは撤回できないと主張する事になる。

 

これに対し、Aは、占有改定による引渡しでは未だ550条但書にいう「履行」とは評価できないとして、Bに反論する事になる。(再抗弁の否認)

 

このように条文の順番に沿って考えていくと、550条但書の「履行」の解釈が論点であることが容易に分かる。

 

判例は、この「履行」には占有改定による引渡しも

(①含まれる②含まれない)としている。

 

よって、Aは既に「履行」をしており、撤回する事はできないため、Bは贈与契約の履行を請求することができる。

 

なお、これが自然債務であるというAの反論は、成り立ちうる。この反論を肯定するか否かは、最高裁判例が出ている訳ではないので、断定するわけにはいかず、検討範囲から除外するために問題文最後になお書きをくっつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(解答)

④①

220点。均等配点。

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