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背信的悪意者(初級)


問題:(司法試験昭和60年度第1問改題)Aは、所有する土地をBに売り渡し、その旨の登記をした。ところが、Cは、Bに対して、自分がAから先に売買によって所有権を取得していたことを主張している。AB間売買、AC間売買は双方瑕疵なく行われていたものとして、Cの主張が認められる場合はいかなる場合だろうか、40字程度で記述しなさい。

 

(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)

 

今回は、出題の趣旨を見抜くのが難しい問題であったと思う。出題の趣旨は、背信的悪意者について聞かれているという事を分析できるか試すことである。

 

もっとも、「第三者」にあたるかどうかについて聞かれていることに思い至ることはさほど難しいことではなかったはずである。

 

順を追って説明していく。民法177条は、

(①登記②登録③通知又は承諾④先後関係)

がなければ物権の取得を第三者に対抗できないものと規定している。

 

そして、本問では、Cには、未だ登記がなされていないため、AからCに所有権が移転したことを第三者であるBには対抗できない。よって、原則としては、Cの主張は認められない。

 

ちなみに、AC間取引を基軸に考えれば第三者はBで、AB間取引を基軸に考えれば第三者はCである。しかし、本問を解答するに際して、AB間取引を基軸に考えることは許されない。

 

なぜなら、問題文において、Cが所有権を主張できるか否かが聞かれているからである。CBに所有権を主張できるか問われており、その際、Bが登記なくしては対抗できない「第三者」にあたるのだろうか、という思考のステップを踏んでほしい。

 

ここでは、Bに登記があることではなく、Cに登記がないことが問題となっているのである。なお、BCに所有権を主張できるか、という問題であれば、Bに登記があることにより、Cが第三者であろうがなかろうが、所有権を主張できることとなる。

 

話を元に戻す。原則としてCBに所有権を主張できないが、Bが「第三者」にあたらなければ、例外的に所有権を主張できる。

 

「第三者」とは、判例によれば、当事者若しくはその包括承継人以外で登記の欠缺を主張するにつき

(①正当な利益②重要な利益③利害関係)を有する者をいう。

 

本件で、Bは間違いなく当事者以外の者である。混乱する人もいると思われるので、補足すると、AC間取引が基軸になっているのであるから、Bは(当たり前だが)AでもCでもないので、当事者ではない。

 

また、BACの相続人である等という事情はないため、包括承継人でもない。くれぐれもAB間取引を基軸として考え、Bは当事者じゃないか、という勘違いをしないで欲しい。

 

ここまで分析して初めて、Bに正当な利益があるかどうかの問題であることが分かる。そして、Bは不法占拠者とは異なり、AB間売買を経ているため、正当な利益はあるように一見思える。

 

そこで、これをひっくり返す事情があるような場合が解答であろうという推測がたつ。

 

それはつまり、信義則上登記の欠缺を主張する正当な利益を有しない者、言い換えると

(①単純悪意者②背信的悪意者③公序良俗違反者)

にあたる場合が答えなのではないか、と思い至ることができるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(解答)

①①②

320点。均等配点。小数点第一位四捨五入。

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