問題:(完全オリジナル問題)民法468条1項第1文は、「債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。」と規定している。このような包括的な抗弁切断の規定は比較法的にも異例であるが、判例は、一定の要件の下、抗弁切断を肯定している。その要件とは、異議をとどめない承諾がなされたことのほかに何があるか。その要件を導き出した理由と共に40字程度で記述しなさい。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
まず、異議をとどめない承諾とはどのようなものかというところから確認する。
通常、債権譲渡は債務者の承諾なしに行われ、譲渡人が債務者に通知することで債務者に対抗することとなる。
その場合、債務者は、譲渡人(元債権者)に対抗できた権利(相殺、解除等)は、譲受人(新債権者)にも対抗できる。債務者の手の届かないところで債権者が勝手に交代して、債務者がいきなり不利な立場に追い込まれるのは理不尽だからである。
この原則が書かれているのが468条2項である。
もっとも、債権者の交代を債務者が異議をとどめないで承諾したのであれば、債務者を不当に害するおそれはないし、何より異議をとどめないでなされたその承諾を信頼して取引に入ったものを保護する必要がある。
そのため、468条1項は異議をとどめないで承諾した場合には、債務者は譲渡人(元債権者)に対抗できた権利を譲受人(新債権者)に対抗できないと規定したのだと判例は捉えている。(違う解釈をする学説もあるし、468条1項は立法ミスだという学説も存在する)
このように民法468条は、468条2項が原則で、468条1項が例外であるという関係にある。
ちなみに、異議をとどめない承諾とは、「何ら異議なし!」と異議がない事を明示する必要はなく、承諾中に異議をとどめていないのであれば、異議をとどめない承諾と評価される。つまり、「はい!」「わかりました!」という承諾では、異議をとどめない承諾と評価されてしまうわけである。
さて、話を戻すと、現在の判例・通説は、比較法的にも異例なこの468条1項の包括的な抗弁切断を
(①禁反言②公平③公序良俗④取引の迅速性確保)に求めている。
表現を変えると、債務者の異議をとどめない承諾にある種の公信力を持たせ、一般債権取引の安全を保護するために抗弁切断という効果が肯定されているのである。
このように債務者の異議をとどめない承諾というのは、外観法理の一種と位置付けられているため、少なくとも
(①譲渡人の善意②譲受人の善意③譲渡人・譲受人の善意④平穏・公然性)
が要件として必要とされている。
ちなみに、譲受人の善意・無過失を要件として設定する学説も有力であるし、判例は無過失が必要か否かの判断を未だしていないので、善意・無過失を要件としても誤りとまではいえない。
(解答)
①②
・2問20点。均等配点。