問題:(完全オリジナル問題)交通事故の加害者Aは、被害者Bとの間で、AがBに1000万円支払う代わりに被害者はその額を超える損害についての賠償請求権を放棄し、今後一切の請求を行わないという内容の示談をなした。この示談は、AとBが「互いに譲歩」し、「争いをやめることを約」しているので、民法695条の和解契約にあたる。ところが、示談から1年後、Bに事件直後には医学的にも予見できなかった後遺症が発生し、Bは通院費等500万円を新たに負担することとなった。Bは、新たに生じた500万円の損害について、Aに損害賠償請求することができるだろうか。理由と結論を40字程度で記述しなさい。なお、Bの新たに生じた500万円の損害についても709条によりAに不法行為責任が生じうることを前提として良い。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
和解契約であることを問題文中で明示したのは、和解というマイナーな契約を出題したことに対応させて、難易度を下げるためである。和解の中では、和解と錯誤、和解と後遺症が二大論点であり、論点としては実はそんなにマイナーすぎることもない。
和解契約というのは、問題文中でも示したとおり、当事者が互いに譲歩する事により、争いをやめることを合意することで成立する。争いをやめることを合意する場合であっても、一方のみが譲歩した場合、それは定義上和解とは呼ばない。
和解には後述するように、争いを蒸し返すことができないという強い効果が認められるが、一方的に譲歩した者は、和解後自ら譲歩した内容と反対の証拠が出てきても諦めるという意思を有しているとは評価できないから、和解契約の対象とはしなかったというのが一つの説明である。
さて、和解は法律関係を確定させることにより、紛争を解決するという機能を果たす。そのため、和解には争いの内容について蒸し返すことを許さない
(①確定的効力②担保的効力③公平的効力④給付保持力)がある。
この確定的効力は、和解された結果と正反対の事実を示す確実な証拠が出てきたとしても和解の効力を覆す事はできないことを意味する。
では、本問のように被害者が当初予見できなかったような後遺症が発生した場合はどうだろうか。
予見できなかった後遺症についても和解の対象と理解するのであれば、確定的効力から紛争を蒸し返すことはできず、被害者Bは新たに請求する事はできない。
もっとも、判例はそれでは被害者が過酷な立場となると考え、被害者が請求権を放棄するという形で譲歩したのは、通常は予想できた損害についてのみであり、予想できなかった後遺症等の損害まで放棄したものとは
(①信義誠実の原則②当事者の合理的意思③公平の原則④公序良俗)
からして評価できないものとした。
つまり、予想できなかった損害は、和解の対象となっておらず、確定的効力が及ばないものと考えたのである。
従って、被害者Bは新たな損害500万円についてAに対して請求することができることになる。
(解答)
①②
・2問20点。均等配点。