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国会議員の期限付逮捕許諾(百選185事件)


国会議員の期限付逮捕許諾(東京地決昭和2936、百選185事件)

 

[事実の概要]

 

tika7

 

 

(検察官A

捕まえた♪

 

 

yumi14

 

 

(衆議院議員X

捕まっちゃった・・・

 

yumi2

 

(衆議院議員X

でも、甘い!(ニヤリ

 

 

tika12

 

 

(検察官A

!?

 

 

 

東京地方検察庁検察官Aは昭和29216日衆議院議員Xに対し贈賄の被疑事実がありとして東京簡易裁判所に逮捕状を請求した。

 

当時は、国会開会中であったため、同裁判所裁判官Bは同日内閣に逮捕許諾の要求書を提出した。

 

内閣はこれを衆議院に附議したところ、衆議院は昭和29223日の本会議において議員X同年33日まで逮捕することを許諾するとの議決をし、内閣は右期限附許諾の通知を発した。

 

よって、裁判官Bは同年224Xに対し逮捕状を発し、その逮捕状は即日執行され、その後同月26日検察官Cの請求により東京地方裁判所裁判官Dは同日Xに対して勾留状を発しこれが即日執行されXは引続き東京拘置所に拘禁されている。

 

Xは、この勾留状には期限が付されておらず、33日まで逮捕することを許諾するという衆議院の議決と矛盾するものであり、勾留の取消しを求めて準抗告の申立てを行った。

 

[裁判上の主張]

 

Xは、

 

「憲法第50条国会法第33条は両議院に対し無条件に許諾権を与えているのであって許諾することも又これを拒否することも一に議院の裁量によるのであるから、議院は逮捕の請求をそのまま許諾をすることができると同時に期限をつけて許諾することもできる筈である。従って本件の如く期限附許諾があった以上、憲法は国家の最高法規として刑事訴訟法の規定に優越する効力を有するのであるから検察官は昭和2933日までの期限を附して勾留の請求をすべく、裁判官も亦同日までの期限を附した勾留状を発すべきであるにかかわらず何等期限を附さずになした本件勾留の裁判は不法であるからその取消を求める」

 

・・・と主張した。

 

憲法50

 

「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない」

 

国会法33

 

「各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない

 

 

[訴訟経過]

 

なし(本決定が、地裁決定であるため)

 

[判示内容]

 

被告人の上記主張に対して、

 

「憲法第五十条が両議院の議員は法律の定める場合を除いて国会の会期中逮捕されないことを規定し、国会法第三十三条が各議院の議員は除外における現行犯の場合を除いては会期中その院の許諾がなければ逮捕されないことを保障している所以のものは、国の立法機関である国会の使命の重大である点を考慮して、現に国会の審議に当っている議院の職務を尊重し、議員に犯罪の嫌疑がある場合においても苟も犯罪捜査権或は司法権の行使を誤り又はこれを濫用して国会議員の職務の遂行を不当に阻止妨害することのないよう、院外における現行犯罪等逮捕の適法性及び必要性の明確な場合を除いて各議院自らに所属議員に対する逮捕の適法性及び必要性を判断する権能を与へたものと解しなければならない。逮捕が適法にしてその必要性の明白な場合においても尚国会議員なるの故をもって適正なる犯罪捜査権或は司法権行使を制限し得るものではない。このことは院外における現行犯罪の場合には議院の許諾なくして逮捕し得るものとしていることによつて明瞭である。」

 

「かくの如く議院の逮捕許諾権は議員に対する逮捕の適法性及び必要性を判断して不当不必要な逮捕を拒否し得る権能であるから、議員に対しては一般の犯罪被疑者を逮捕する場合よりも特に国政審議の重要性の考慮からより高度の必要性を要求することもあり得るから、このような場合には尚これを不必要な逮捕として許諾を拒否することも肯認し得るけれども、荀も右の観点において適法にして且必要な逮捕と認める限り無条件にこれを許諾しなければならない。」

 

「従って、議員の逮捕を許諾する限り右逮捕の正当性を承認するものであって逮捕を許諾しながらその期間を制限するが如きは逮捕許諾権の本質を無視した不法な措置と謂はなければならない。」

 

「議院の逮捕許諾権は憲法及び法律に定める手続によって逮捕することを許諾するか否かを決定する権能であって、憲法及び法律に定める逮捕以外の方法により逮捕を許諾し又はこれを要求する権能ではない。」

 

「本件Xの逮捕許諾においてその逮捕期間を制限した点は逮捕許諾権の本質を誤り刑事訴訟法を無視した法的措置を要求するものであつて無効である。従って何等制限を附せず刑事訴訟法の規定に準拠してなした本件勾留の裁判は正当であり、これと反対の見解に立ち右裁判の取消を求める本件申立は理由がないから刑事訴訟法第四百三十二条第四百二十六条第一項によって主文のとおり決定する。」

 

[コメント&他サイト紹介]

 

キャラのやり取りが、最初は事実の説明補助だったのに、最近は導入のショートコントになっております・・・。まぁこれはこれでいっかと思っているのですが。

他サイト様は、本判例について詳細に分析されたものはありませんでしたが、

甲斐教授の

http://www5a.biglobe.ne.jp/~kaisunao/seminar/814hutaiho-tokken.htm

・・・が、議員の不逮捕特権について詳しいです。

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