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第三者所有物没収事件(百選118事件)


第三者所有物没収事件(最判昭和371128、百選118事件)

 

[事実の概要]

 

―――門司市周辺の沖合―――

 

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(水上警察)

止まりなさい~

 

 

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はい・・・

 

 

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(水上警察)

この船、何載せてるの?

 

 

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朝鮮の服とか化粧品です・・・

 

 

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(水上警察)

密輸?

 

 

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ヒュ~♪・・・ヒュルル~♪・・・

 

 

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(水上警察)

口笛・・・吹けてないよ?

 

 

 

被告人両名は、韓国向けに貨物を密輸出しようと企て、所轄税関の輸出免許を受けないで、船に貨物(原価410万円分)を積載し、また、他人から輸送を依頼されたジヨンベルベット18反も積載し、それらを博多沖の海上で韓国向けの漁船に積み替えようとしたが、途中で時化にあったため、その目的を遂げず、帰り道において、海上警邏中の司法巡査に出会った。

 

司法巡査らは、停船させた上、船長に対し職務質問すると共に、貨物を任意調査したところ、その内容は朝鮮服地及び化粧品等で、発送地並びに荷主行先地等曖昧であり、荷送り状も携帯せず、朝鮮近海の海図及び羅針盤を所持していたので、沖合800メートルの海上にて被告人両名を密輸出の嫌疑で逮捕した

 

 

[裁判上の主張]

 

弁護人は、控訴趣意書によれば、

 

     被告人両名の司法警察員に対する供述調書は、司法警察員の暴行脅迫あるいは誘導によりなされた任意性なき供述調書であって証拠能力がない

 

     他人所有の貨物(ジヨンベルベット18反)を、所有者不明のまま、所有者に財産権擁護の機会を全く与えることなく没収するのは、憲法291項に反する(→この主張は、没収を宣告した第一審、控訴審判決への反論である)

 

・・・ゆえに、①により、被告人は無罪、②により、少なくとも他人所有物の没収は認められない旨を主張した。

 

[訴訟経過]

 

1審判決(福岡地判昭和30425):


被告人X1懲役六月に、被告人X2懲役四月に各処する。但し何れも三年間右刑の執行を猶予する
被告人両名に対し司法巡査の差押に係る機帆船一隻及判示別表目録記載の物件並ジヨンベルベツト十八反は何れも之を没収する

控訴審判決(福岡高判昭和30921):控訴棄却

 

 

1審は、裁判上の主張②の点につき、何らの考慮もすることなく、没収した。

 

控訴審は、ジヨンベルベット18反につき、「原判決挙示の各証拠と対照すれば被告人等所有の貨物でなく、他人からその輸送を依頼せられたものであることは容易に看取せられる」と認定したが、(控訴審において証言もしている)訴外Aの所有物である可能性は高いものの、未だその証明がなされていないため、(特定の)他人の物と認定ができず、仮に訴外Aのものであったとしても、訴外Aは、本件犯行のような危険のあることは予知していたと認定して、結局②の点につき、没収を肯定した。

 

[判示内容]

 

主    文

 

原判決および第一審判決を破棄する。

 

被告人Aを懲役六月に、同Bを懲役四月に各処する。

但し本裁判確定の日から三年間右各刑の執行を猶予する

福岡地方検察庁小倉支部の保管に係る機帆船はこれを没収する

第一審における訴訟費用は全部被告人両名の連帯負担とする。

 

理    由

 

裁判上の主張②の点につき、

 

「関税法一一八条一項の規定による没収は、同項所定の犯罪に関係ある船舶、貨物等で同項但書に該当しないものにつき、被告人の所有に属すると否とを問わず、その所有権を剥奪して国庫に帰属せしめる処分であって、被告人以外の第三者が所有者である場合においても、被告人に対する附加刑としての没収の言渡により、当該第三者の所有権剥奪の効果を生ずる趣旨であると解するのが相当である。」

 

「しかし、第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であって、憲法の容認しないところであるといわなければならない。けだし、憲法二九条一項は、財産権は、これを侵してはならないと規定し、また同三一条は、何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられないと規定しているが、前記第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没收せられる第三者についても、告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であって、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならないからである。」

 

「そして、このことは、右第三者に、事後においていかなる権利救済の方法が認められるかということとは、別個の問題である。然るに、関税法一一八条一項は、同項所定の犯罪に関係ある船舶、貨物等が被告人以外の第三者の所有に属する場合においてもこれを没収する旨規定しながら、その所有者たる第三者に対し、告知、弁解、防禦の機会を与えるべきことを定めておらず、また刑訴法その他の法令においても、何らかかる手続に関する規定を設けていないのである。従って、前記関税法一一八条一項によって第三者の所有物を没収することは、憲法三一条、二九条に違反するものと断ぜざるをえない。」

 

そして、そもそも被告人は第三者所有物の没収の点について、上告する利益があるのか、という点に関して、

 

「かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。のみならず、被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができる」

 

・・・と判示し、過去の判例を変更した。

 

その上で、

 

「本件につきこれを見るに、没收に係る貨物が被告人以外の第三者の所有に係るものであることは、原審の確定するところであるから、前述の理由により本件貨物の没収の言渡は違憲であって、この点に関する論旨は、結局理由あるに帰し、原判決および第一審判決は、この点において破棄を免れない。」と結論づけている。

 

もっとも、被告人については、

 

「原審の是認する第一審判決の確定した事実に法律を適用すると、被告人らの同判示所為は、関税法一一一条二項、一項、刑法六〇条に該当するから、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期範囲内で被告人Aを懲役六月に、同Bを懲役四月に各処し、情状により刑法二五条一項を適用して本裁判確定の日から三年間右各刑の執行を猶予し、主文第四項掲記の機帆船は、本件犯行の用に供した船舶であって、被告人Bの所有に係るものであるから、関税法一一八条一項本文により、その換価代金四三万一、〇〇〇円を没収する」

 

・・・として、有罪判決を下している。

 

[コメント&他サイト紹介]

 

見落としがちですが、「被告人が第三者所有物の没収を理由として上訴できるのか」という点も、本判例の1つのテーマなのですね。

この判例に対する分析というわけではありませんが、

http://33765910.at.webry.info/200910/article_18.html

・・・この「弁護士小森榮の薬物問題ノート」様の記事は、現在の第三者所有物没収手続を知る上でとても有用なものでした。

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