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東京都教組事件(百選214事件)


東京都教組事件(最判昭和44・4・2、百選214事件)

 

[事実の概要]

 

被告人は、東京都内の学校教職員によって組織されている東京都教職員組合の幹部達6名である。

 

yumi4

 

小中学校教職員に勤務評定が導入される!?

横暴反対~!

 

 

yumi3

 

え~教職員の皆さん。皆一斉に有給休暇を取って、

ボイコットいたしましょう!

 

 

kanako3

 

(各学校――校長)

生徒の事も考えてよ・・・

 

 

yumi14

 

 

それは・・・でも、こっちも生活かかっているの!

 

 

 

 

被告人らは、東京都教育委員会の都内公立小中学校教職員に対する勤務評定に反対し、これを阻止する目的をもって、傘下組合員である教職員らをして年次有給休暇の名のもとに校長らの承認なくして就業を放棄し同盟罷業を行わしめるため、休暇届を提出して、勤務評定反対集会に参加するべき旨の指令を配布、伝達する等様々な方法によって、地方公務員である教職員に対し、同盟罷業の遂行をあおった

tika3

 

 

この行為は、許しちゃダメだ!訴えてやる!

 

 

[訴訟上の主張]

 

地方公務員法37条1項

 

「職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない

 

地方公務員法61条4号
「何人たるを問わず、第37条1項前段に規定する違法な行為の遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者」は、「三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する」

tika6

 

ダメって書いているよね!

先生なんだから、ルール守ってよね!

 

 

 

被告人は、この地方公務員法37条や61条4号は、憲法28条や、憲法21条、18条、31条に違反する違憲の法律の規定であり、無効であるから、被告人の行為は罪とはならない、百歩譲って構成要件に該当するとしても、正当行為として違法性が阻却される、と主張した。

 

yumi4

 

間違ったルールに従う必要はない!

それを教え、自分で考えるくせをつけさせるのも先生の役割だ!

 

 

 

 

[訴訟経過]

 

第一審判決(東京地判昭和37・4・18):無罪
控訴審判決(東京高判昭和40・11・16):有罪

 

・・・第一審判決は、地方公務員法61条4号を憲法31条の趣旨に沿った形で限定解釈し、被告人らの行為は、地方公務員法61条4号に該当しないとして、無罪とした。反面、控訴審判決は、限定解釈を否定し、被告人らの行為は、地方公務員法61条4号にあたるとして有罪とした。

 

[判示内容]

 

主    文

 

原判決を破棄する。
被告人らはいずれも無罪

 

理    由

 

公務員の労働基本権について、全逓中郵事件判決の基本的立場を踏襲することをまず宣言している。

 

そして、

 

① 労働基本権に関する基本的視点

 

「「公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」とする憲法一五条を根拠として、公務員に対して右の労働基本権をすべて否定するようなことが許されないことは当然であるが、公務員の労働基本権については、公務員の職務の性質・内容に応じて、私企業における労働者と異なる制約を受けることのあるべきことも、また、否定することができない。」

公務員の職務には、多かれ少なかれ、直接または間接に、公共性が認められるとすれば、その見地から、公務員の労働基本権についても、その職務の公共性に対応する何らかの制約を当然の内在的制約として内包しているものと解釈しなければならない。しかし、公務員の労働基本権に具体的にどのような制約が許されるかについては、公務員にも労働基本権を保障している叙上の憲法の根本趣旨に照らし、慎重に決定する必要がある」

「地公法三七条および六一条四号が違憲であるかどうかの問題は、右の基準に照らし、ことに、労働基本権の制限違反に伴う法律効果、すなわち、違反者に対して課せられる不利益については、必要な限度をこえないように十分な配慮がなされなければならず、とくに、勤労者の争議行為に対して刑事制裁を科することは、必要やむをえない場合に限られるべきであるとする点に十分な考慮を払いながら判断されなければならないのである。」

 

② 違憲か合憲限定解釈か

 

「ところで、地公法三七条、六一条四号の各規定が所論のように憲法に違反するものであるかどうかについてみると、これらの規定が、文字どおりに、すべての地方公務員の一切の争議行為を禁止し、これらの争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、あおる等の行為(以下、あおり行為等という。)をすべて処罰する趣旨と解すべきものとすれば、それは、前叙の公務員の労働基本権を保障した憲法の趣旨に反し、必要やむをえない限度をこえて争議行為を禁止し、かつ、必要最小限度にとどめなければならないとの要請を無視し、その限度をこえて刑罰の対象としているものとして、これらの規定は、いずれも、違憲の疑を免れないであろう。」

「しかし、法律の規定は、可能なかぎり、憲法の精神にそくし、これと調和しうるよう、合理的に解釈されるべきものであつて、この見地からすれば、これらの規定の表現にのみ拘泥して、直ちに違憲と断定する見解は採ることができない。すなわち、地公法は地方公務員の争議行為を一般的に禁止し、かつ、あおり行為等を一律的に処罰すべきものと定めているのであるが、これらの規定についても、その元来の狙いを洞察し労働基本権を尊重し保障している憲法の趣旨と調和しうるように解釈するときは、これらの規定の表現にかかわらず、禁止されるべき争議行為の種類や態様についても、さらにまた、処罰の対象とされるべきあおり行為等の態様や範囲についても、おのずから合理的な限界の存することが承認されるはずである。」

 

③ 判断基準定立

 

「地方公務員の具体的な行為が禁止の対象たる争議行為に該当するかどうかは、争議行為を禁止することによって保護しようとする法益と、労働基本権を尊重し保障することによって実現しようとする法益との比較較量により、両者の要請を適切に調整する見地から判断することが必要である。そして、その結果は、地方公務員の行為が地公法三七条一項に禁止する争議行為に該当し、しかも、その違法性の強い場合も勿論あるであろうが、争議行為の態様からいつて、違法性の比較的弱い場合もあり、また、実質的には、右条項にいう争議行為に該当しないと判断すべき場合もあるであろう。」

「ところで、地公法六一条四号は、争議行為をした地方公務員自体を処罰の対象とすることなく、違法な争議行為のあおり行為等をした者にかぎつて、これを処罰することにしているのであるが、このような処罰規定の定め方も、立法政策としての当否は別として、一般的許されないとは決していえない。ただ、それは、争議行為自体が違法性の強いものであることを前提とし、そのような違法な争議行為等のあおり行為等であってはじめて、刑事罰をもつてのぞむ違法性を認めようとする趣旨と解すべき」

「あおり行為等の意義および要件については、意見の分かれるところであるが、一般に「あおり」の意義については、違法行為を実行させる目的で、文書、図画、言動により、他人に対し、その実行を決意させ、またはすでに生じている決意を助長させるような勢のある刺激を与えることをいうと解してよい」

(しかし、)「争議行為そのものに種々の態様があり、その違法性が認められる場合にも、その強弱に程度の差があるように、あおり行為等にもさまざまの態様があり、その違法性が認められる場合にも、その違法性の程度には強弱さまざまのものがありうる。それにもかかわらず、これらのニユアンスを一切否定して一律にあおり行為等を刑事罰をもつてのぞむ違法性があるものと断定することは許されないというべきである。ことに、争議行為そのものを処罰の対象とすることなく、あおり行為等にかぎつて処罰すべきものとしている地公法六一条四号の趣旨からいつても、争議行為に通常随伴して行なわれる行為のごときは、処罰の対象とされるべきものではない。」

 

④ あてはめ

 

「本件をさきに詳細に説示した当裁判所の考え方に従って判断すると、本件の一斉休暇闘争は、同盟罷業または怠業にあたり、その職務の停廃が次代の国民の教育上に障害をもたらすものとして、その違法性を否定することができないとしても、被告人らは、いずれもA教組の執行委員長その他幹部たる組合員の地位において右指令の配布または趣旨伝達等の行為をしたというのであって、これらの行為は、本件争議行為の一環として行なわれたものであるから、前示の組合員のする争議行為に通常随伴する行為にあたるものと解すべきであり、被告人らに対し、懲戒処分をし、または民事上の責任を追及するのはともかくとして、さきに説示した労働基本権尊重の憲法の精神に照らし、さらに、争議行為自体を処罰の対象としていない地公法六一条四号の趣旨に徴し、これら被告人のした行為は、刑事罰をもつてのぞむ違法性を欠くものといわざるをえない。」

 

⑤ 結論

 

「したがつて、被告人らは、あおり行為等についての刑責を免れないとした原判決の右判断は、法令の解釈適用を誤つたもので、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであり、これを破棄しなければ著しく正義に反するものといわざるをえない。」

 

[コメント&他サイト紹介]

 

これは、今の時代でしたら、法が仮に許しても世間が許しませんよね。それはともかくとして、判示が長い上に、判示内容の構造が捉えづらくて、どの部分を抜き出してくるのか、かなり苦労しました。

 

聖地巡礼様の、

http://ameblo.jp/seichi-junrei/entry-11121816708.html

・・・という記事は、都教組事件の現場の写真が貼られています。聖地巡礼にも色々な形があるのだなぁと教えていただきました。様々な角度から記憶したい内容へのアクセス方法があった方が、記憶の定着には良いと思いますので、このような試みは個人的にはかなり好きです。

 

そして、君塚正臣先生の、

http://www.tezukayama-u.ac.jp/tlr/11/kimizuka/honbun_j.htm

・・・という、記事というか、ミニ論文も、字が小さいので、かなり見づらい上にレベルが高いけれど、ご参考になるのでは、と思います。

特に、最後の

「合憲限定解釈は適用違憲とは概念的に区別される。適用違憲は、合憲限定解釈が不可能・不適切である場合に、法令を当該事件に適用することが違憲であるか、合憲限定解釈が可能であるのに当該事例において行われず、その結果、違憲的適用がなされたというものだとされる。そうなると、法文の合憲部分と違憲部分を分離できる合憲限定解釈と、そうではない適用違憲とは理論的に異なり、理論的には前者が先行するようにも思われる。だが、適用違憲の典型的な場合は、合憲限定解釈に類似するという見解もある。また、合憲限定解釈は、ある法文が特定の意味を持たないことを言いながら、別の意味の憲法判断は回避しているのだとすれば、機能的には適用違憲に似ているとも言える。そして、適用違憲と合憲限定解釈のどちらを先に行うべきかという区別はないという見解もある。実際にどうであるのかは、なお不分明である

・・・というご記載は、とても参考になりました。

「法文の合憲部分と違憲部分を分離できる」というご記載は、「法文が合憲限定解釈が可能である場合の」という意味で読んでしまうと「そうではない適用違憲」という言葉が意味不明になりますので(私は、最初そう考えて、???となりました・・・)、「合憲限定解釈が法文の合憲部分と違憲部分を分けるパワーをもっている」と読むのが正しいようです。

 

 

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