バイク規制事件(最判平成3・9・3、百選26事件)
[事実の概要]
被告は、私立学校であり、原告は私立学校の元学生である。
バイクは~?
免許を取らない、乗らない、買わない!
その原則の名は~?
三ない原則!(キリッ
・・・・・・
このように、被告においては、その指導方針として、バイクの三ない原則を定めていた。
しかし、原告は、自動二輪車免許を取得し、親からスズキGSXの250ccを買ってもらった。
そんなある時、原告は友人にバイクを貸してほしいと頼まれ、原告は快く貸した。
しかし、その友人は、別の友人にバイクを転貸し、その別の友人は、無免許で乗り回し、挙句の果てに検問中の警察官から逃れるために、逃げようとした際、運転を誤り、警察官をはね飛ばし、けがをさせてしまった。
このことを知った原告らは、この事故が学校に知れると大変なことになるので、学校には報告しないことにした。
しかし、警察官を撥ねた友人が逮捕され、警察からの連絡により、学校は事故のことを知るに至った。
学校は、原告が本件事故に間接的に関与した事、事故を知ったのに学校に秘匿した事、三ない原則の全てに違反した事を理由として、自主退学するよう原告に勧告し、原告は自主退学をした。
[訴訟上の主張]
被告は、300万円支払え!
・・・やだ。
原告の請求の主な根拠は、三ない原則は、違憲、違法でかつ不合理なものであるから、この違反を理由とする自主退学勧告も違法なものである。
かかる自主退学勧告によって、自主退学せざるを得ない立場に追い込まれた原告は、その後高校2年生の学業半ばにして被告の学園を離れ、その後はどこの高校にも入れてもらえぬまま失望の日々を送ることを余儀なくされた。
また、原告は、学歴欄に不名誉な記載を残すことになり、今後、就職の度に雇主から差別が加えられる。
このような生涯を通じての原告の精神的損害は、300万円を下らない、というものであった。
[訴訟経過]
第1審(千葉地判昭和62・10・30):請求棄却
控訴審(東京高判平成1・3・1):控訴棄却
[判示内容]
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
まず被告が、私立学校である事に着目して、
「憲法上のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、国又は公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障することを目的とした規定であって、専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものでない」
「したがって、その趣旨に徴すれば、私立学校である被上告人設置に係る高等学校の本体校則及び上告人が本件校則に違反したことを理由の一つとしてされた本件自主退学勧告について、それが直接憲法の右基本権保障規定に違反するかどうかを論ずる余地はない」
・・・として、原告の、本件校則は違憲ゆえに違法であるとの主張を一蹴している。
その上で、校則の違法性について、
「原審の確定した事実関係の下においては、本件校則が社会通念上不合理であるとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる」
・・・と、簡潔にこれも原告の主張は一蹴されている。
[コメント&他サイト紹介]
原告側の代理人は、退学ではなく、自主退学であった事、(退学に値するかはともかくとして)完全に原告側に非があった事、髪型規制とは異なり、バイク規制は社会通念上合理性が認められる事などから、物凄く論理を組み立てにくかっただろうな~と想像しています。
本判決については、憲法判例解説様の、
http://ameblo.jp/ut-liberi-esse-possimus/entry-10256563479.html
・・・が良いと思います。見やすい字で丁寧に判例を分析して下さっています。
少しレベルが高いものとしては、
http://www.niji.or.jp/home/toyohiro/teacher/hanrei/jirei4.htm
・・・が、少し読みにくいものの、上告理由が丁寧に載っている点でオススメです。