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平成28年度第44問解説


 

【平成28年度 行政書士試験 第44問 40字記述解説(行政法)】

 

問題(平成28年度第44問):(平成28年度の問題については、著作権者である行政書士試験研究センター様の問題使用許諾を得ておりませんので、全文引用は避け、問題掲載ページへのリンクを貼ります。コチラです。なお、以下では著作権法で許される範囲の部分的な引用を行っております。)

 

(解説)

 

とてもシンプルな知識問題ですね。

①Xに対する『過料』を科すための手続は、いかなる法律に定められており、②『過料』は、いかなる機関により科され、③その『制裁』は、行政法学において何と呼ばれているか、が問われています。

問題文のどこに着目すべきか示した後で、知識を整理することにしましょう。

 

(1)着目すべきポイント

 

解答の為に着目すべきポイントは、『条例』という言葉と、『過料』という言葉です。知識が整理されていれば、この二つの言葉にすぐ目が行きます。

また、この二つの言葉に気づいた時点で①②③全ての解答が分かりますが、問題文はわざわざ(過料による)『制裁』という言葉を用いてヒントを余分にくれています。

では、なぜ『条例』と『過料』に着目すべきなのか、知識を整理する中において併せて示していきますね。

 

(2)知識整理~行政罰~

 

一から全てを整理するには紙幅が足りませんので、簡単に整理しますね。

過去の行政上の義務違反に対する制裁として科される罰を行政罰と言います。

例えば、Xが建築確認申請をせずに建築物を建て、建築基準法違反を理由に罰金刑が科されたような場合や、Xが必要な許可(経済産業大臣の許可)を得ずに火薬類の製造業を長年営み、火薬類取締法違反を理由に懲役刑(同法58条1号)が科されたような場合が典型です。

 

この行政罰は、行政刑罰行政上の秩序罰に分けられます。

行政刑罰というのは、行政上の義務違反に対する制裁として、刑法上の刑名がある罰(懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収)を科す制裁です。上の建築基準法違反の例も、火薬類取締法違反の例も、「罰金刑」・「懲役刑」が科されているため、いずれもこの行政刑罰にあたります。

これに対して、行政上の秩序罰というのは、行政上の秩序維持のために違反者に制裁として、過料という金銭的負担を課すものです。

 

行政刑罰と行政上の秩序罰は、過去の行政上の義務違反に対する制裁であり、違反行為の抑止機能を有する点で共通していますが、制裁の内容が「刑法上の刑名がある罪」か「過料」かが異なっています。本問のXに「過料」を科す行為がいずれにあたるかは、一目瞭然ですね。③(行政法学上の呼び名)の答えは、「行政上の秩序罰」です。

また、このような区別を前提とした上で、立法者が、とある行政上の義務違反への制裁をいずれに振り分けて立法するかの基準として、反社会性が強い行為には行政刑罰を用い、単純な義務の懈怠には行政上の秩序罰を用いるという大ざっぱな物差しがあるようです。

 

(3)知識整理~類似概念の整理~

 

ついでなので、似たような概念との区別をしておきましょう。

今まで、「行政罰」の中に「行政刑罰」と「行政上の秩序罰」がある、という話をしてきました。

「行政刑罰」は、通常の「刑罰」と区別するために「行政」が付いていますよね。「行政上の秩序罰」も、他にも「○○上の秩序罰」があり、それと区別するために、「行政上の」という言葉をつけています。

代表的なものが、「司法上の秩序罰」です。証人が正当な理由がなく宣誓または証言を拒んだときに過料に処する旨の規定(刑事訴訟法160条)がこの典型例です。

 

類似概念として、他に「執行罰」というものもあります。

執行罰というのは、他人が代わって行うことのできない義務(非代替的作為義務又は不作為義務)を履行しない場合に、一定の期間を区切って義務者に義務の履行を促し、それまでに義務が履行されないときには、一定額の過料を科すものです。義務者に心理的圧力を加えて間接的に義務を履行させるので、間接強制とも呼ばれています。

「行政罰」は過去の義務違反に対する制裁ですが、「執行罰」は、将来の履行を確保するための措置の一つであり、この点が区別ポイントです。

この知識を踏まえると、問題文が、過料による『制裁』を何と呼んでいるか、と表現していることの意味も分かるのではないでしょうか。

 

(4)知識整理~適用法律と機関~

 

では、①(いかなる法律に定められているか)と②(いかなる機関によりなされるか)の答えを探っていきましょう。

行政上の秩序罰は、「法律」に罰則規定を設けても良いですし、「条例・規則」に罰則規定を設けても良いものとされており、各々で手続及び根拠法令が異なります。

従来は、「条例」で過料を科すことは認めらないものと考えられてきました。しかし、地方分権改革に伴い、地方自治法が改正されて、条例のできる事・すべき事が拡大しました。その結果、条例の実効性を確保する必要が生じたため、条例違反の制裁として過料を科すことが容認されるようになったのです。

 

では、手続の根拠法令と機関について整理しましょう。

「法律」に罰則規定を設ける際は、手続の根拠法令は、原則として「非訟事件手続法」で、過料を科す機関は、「過料に処せられるべき者の住所地を管轄とする地方裁判所」です。

これに対して、「条例」に罰則規定を設ける際は、手続の根拠法令は、①「地方自治法」で、過料を科す機関は、②「普通地方公共団体の長」です。

「条例」に罰則規定を設ける場合に関する条文を見ておきましょうか。

 

地方自治法14条

3項 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる

 

地方自治法255条の3

1項 普通地方公共団体の長が過料の処分をしようとする場合においては、過料の処分を受ける者に対し、あらかじめその旨を告知するとともに、弁明の機会を与えなければならない。

 

14条では「過料」と明記され、255条の3においては「普通地方公共団体の長」が主体であることが前提とされていますね。

以上の知識を前提とすれば、「条例」という言葉に着目すべきであった理由が分かって頂けたかな、と思います。

 

(5)まとめ

 

以上をまとめると、①「地方自治法」に定められており、②過料は、「普通地方公共団体の長」により科され、③このような過料による制裁を「行政上の秩序罰」と呼ぶ、というのが解答となりますね。

 

①は、「地方自治法」以外は点数がもらえないでしょう。答えを知らなければ、「手続」なので、「行政手続法」とか書いちゃいそうですね。

②は、「同法によれば、」と問われているので、「普通地方公共団体の長」が正しい解答と思われます。もっとも、問いが「『Xに対する』過料を……、また、同法によれば、」という文章なので、具体例に沿って「A市長」と表記しても点数は引かれないと思います。点数が引かれるのであれば、それは出題側の聞き方にも問題があるのでは?と思っちゃいますよね。

③は、「行政上の秩序罰」が正しい解答と思われます。「秩序罰」とのみ表記するのは、不正確なんじゃないかなぁと思うのですが、私が見た限りLEC以外全ての解答速報が「秩序罰」としておりますので、それでもいいのかもしれません。字数の制約がありますしね。もちろん、私としても「秩序罰」と書いて点数が引かれるような話だとは思っていません。

 

(解答例)

地方自治法に定められ、普通地方公共団体の長により科され、行政上の秩序罰と呼んでいる。

 

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