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平成27年度46問解説


 

【平成27年度 行政書士試験 第46問 40字記述解説(民法2)】

 

 

問題(平成27年度第46問):(平成27年度の問題については、著作権者である行政書士試験研究センター様の問題使用許諾を得ておりませんので、全文引用は避け、問題掲載ページへのリンクを貼ります。コチラです。なお、以下では著作権法で許される範囲の部分的な引用を行っております。)

 

(解説)

 

2015年11月現在で、物凄くタイムリーな問題です。

ワイドショーをずっと賑わしていましたので、下手をするとお昼の情報番組をずっと見ている人の方が詳しいかもしれませんね。

 

まずは関係する条文を見てみましょう。

 

民法772条

1項 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する

2項 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する

 

民法774条

第七百七十二条の場合において、は、子が嫡出であることを否認することができる。

 

民法775条

前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。

 

民法777条

嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない。

 

……あまり馴染みのない条文でしょうか。

これらの条文を使って、今回の事案をとりあえず分析してみましょう。

 

「AとB」が「婚姻」してから「3年後」に、母親Bは子Cを懐胎しました。

ということは、「婚姻中に懐胎」したわけですから民法772条1項が適用されて、Cは父親Aの子と推定されます。

そして、今回のケースは民法774条のいう「第772条の場合」にあたりますので、Aは否認権を有しています。

また、「Cの親権者にはBがなる」事が合意されて協議離婚しているので、Aは、「子C又は親権を行う母B」に対する「嫡出否認の訴え」によって、「子Cが嫡出であることを否認することができる」ことになります。

そして、その訴えは、「夫Aが子Cの出生を知った時から一年以内に提起」すべきです。

 

……条文を見ながらですと、これほど簡単な問題はないですね(笑)

これを40字程度にまとめれば正解です。

ですが、この問題、実はもう少しだけ奥が深いです。

 

民法772条の存在はいったんちょっとだけ忘れて下さい。

そもそも、およそ民事裁判においては、法律関係の存在・不存在を確認してもらう利益があれば、存在・不存在確認の訴えを起こすことができます。

ここでいう法律関係には、当然「親子関係」も入ります。確認の利益がある限り、「親子関係」の存在・不存在確認の訴えをすることができるのです。この確認訴訟は、基本的に、確認の利益があるのであれば、いつでも、利害関係者であれば、確認を求める当事者に対して起こす事ができるものと考えられています。

 

もっとも、上で見た民法772条以下の制度(特に民法777条)は、「婚姻中に懐胎した子」の家庭環境の法的安定を早期に図る事を目的にしています。そうすると、民法774条・775条が規定する嫡出否認の訴えというのは、原則としては「婚姻中に懐胎した子」の親子関係の存在を否定する唯一の方法であると考えるべきです。換言すれば、「婚姻中に懐胎した子」に関しては、民法772条以下の条文によって「親子関係」の存在・不存在確認の訴えの可能性が排除されている。原則としてこのように考える必要があります。

 

しかし、いつでもこのように考えるのでは、不都合が生じます。「婚姻期間中に夫との性交渉がなかったことが、同棲の欠如によって外観上明白な場合」です。例えば、懐胎前は、ずっと夫が収監されていて、夫の子を妻が懐胎するはずがないことが明らかなような場合です。このような場合は、そもそも民法772条が推定をおいた根拠(=婚姻中に懐胎したのであれば、婚姻中の妻には貞操義務があるため、夫との子である蓋然性が高い、という経験則)が崩れます。

そこで、このような場合は、「婚姻中に懐胎した子」であっても、例外として民法772条の推定は働かず、民法772条以下が適用されない結果、「親子関係」の存在・不存在確認の訴えの余地が認められています。

 

ここまでを本問に即して言えば、Cが「婚姻中に懐胎した子」である事は既に確認しましたが、今回のケースが「婚姻期間中に夫との性交渉がなかったことが、同棲の欠如によって外観上明白な場合」であれば、Cに772条以下が例外的に適用されず、Cが嫡出推定を受けない結果、Aは親子関係の不存在確認の訴えで父子関係を争うべきことになります。

当然、「婚姻期間中に夫との性交渉がなかったことが、同棲の欠如によって外観上明白な場合」でなければ、原則通りCに772条以下が適用され、Aは嫡出否認の訴えで父子関係を争うべきなのです。

 

では、今回のケースは、「婚姻期間中に夫との性交渉がなかったことが、同棲の欠如によって外観上明白な場合」でしょうか。

参考となる判例が、3つあります。

 

(1)最判昭和44年5月29日

妻が夫と2年半以上前から事実上離婚状態にあり、全く交渉を絶っている間に、妻が他の男と性的関係を持ち、夫と正式に離婚した後、300日以内に子供を出産した事例。最高裁は、子供を「実質的には民法772条の推定を受けない」としました。

 

(2)最判平成10年8月31日

妻と夫が婚姻(1987年11月18日)後、すぐ不和となり、3か月後(1988年2月頃)には性行為がほとんどない状態となった。1年後(1988年10月12日)には、別居状態となったが、別居の1か月後(1988年11月22日)には性行為が1度だけあった。そしてそのさらに1か月後(1988年12月20日)、夫は妻の妊娠を妻から知らされ、半年後(1989年6月22日)、調停離婚した。その後(1989年7月27日)、妻は子を出産した事例。最高裁は、事実上の離婚状態であれば、「民法772条の推定を受けない」ものの、別居後、一度性行為の機会があったことや、調停の内容に婚姻費用の分担や出産費用の支払に応じるものがある事を理由に、「婚姻の実態が存しないことが明らかであったとまでは言い難い」ため、「民法772条の推定を受けない嫡出子にあたるとはいえない」としました。

 

(3)最判平成12年3月14日

夫と妻との婚姻関係が終了してその家庭が崩壊しているとの事情が存在することの一事だけでは、「子の身分関係の法的安定性を保持する必要が当然になくなるものではない」として、夫が、嫡出の推定を受ける子に対して、嫡出否認の訴えを提起し得る期間の経過後に、親子関係不存在確認の訴えを提起することは許されない、としました。この判例こそ、「婚姻期間中に夫との性交渉がなかったことが、同棲の欠如によって外観上明白な場合」という基準(外観説)を明確に採用した判例です。

 

以上を判断材料として、今回の事例を見てみましょう。

問題文の表現では、Cを懐胎した際、AとBは別居状態となっていた時間的可能性はありますが、継続した別居状態の後にBが懐胎した、という訳ではなく、性交渉が無かった事が外観上明白とは全く言えません。また、協議での離婚が成立出来ている上、協議離婚の内容には、Aが父親としてCの養育費を毎月支払うことが含まれているため、(2)の判例同様、「婚姻の実態がなかったとまでは言えない」と言えそうです。よって、「婚姻期間中に夫との性交渉がなかったことが、同棲の欠如によって外観上明白な場合」とは言えない可能性が高い、と言うべきと思われます。

ということは、Cは「民法772条の推定を受けない嫡出子にあたるとはいえない」わけです。つまりは、民法772条の推定を受けるため、父子関係を否定するためには、親子関係不存在確認の訴えではなく嫡出否認の訴えを提起すべきなのです。

ここまで分析して初めて、答えに辿りついた、と言えます。

 

ただし、本問に限っては、もし嫡出否認の訴えか、親子関係不存在確認の訴えか迷った場合は、問いに「いつまでに」という言葉があるため、出訴期間制限のある嫡出否認の訴えにヤマを張る事は十分可能だったと思われます。

 

 

 

解答例:C又はBを相手として、Cの出生を知った時から一年以内に、嫡出否認の訴えを提起するべき

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