問題:Xは、外務大臣に対して旅券の発給を申請したが拒否処分を受けたため、取消訴訟を提起した。これについて、裁判所は、旅券法により義務付けられた理由の提示が不十分であるとして、請求を認容する判決をなし、これが確定した。この場合、行政事件訴訟法によれば、外務大臣は、判決のどのような効力により、どのような対応を義務付けられるか。
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問題文より、取消訴訟の請求認容判決が確定していることがわかる。この判決の効力がどのように表れるのか、事案に当てはめて考えることが求められている。
そこで、まず取消判決の効力について考えてみたい。取消判決の効力には、3つある。
処分をなかったことにする効力である
(①既判力②形成力③拘束力④自力執行力)と、
民事訴訟の判決同様、紛争の蒸し返しを防止し、判決の矛盾抵触を避ける効力である
(①既判力②形成力③拘束力④自力執行力)と、
行政事件訴訟法33条1項に定められており、裁判所の判断の内容を行政庁に尊重させる効力である
(①既判力②形成力③拘束力④自力執行力)がある。
このうち、形成力は、本件でいうと、拒否処分がなかったことになる、という効果を生み出している。
しかし、拒否処分をなかったことにする形成力により、外務大臣が何らかの対応を義務付けられることはない。形成力は、処分の効力を否定するだけで、行政庁に義務を課すものではないからである。
従って、「義務」を問うている問題の答えたりえない。
次に、既判力は、本件でいうと、本件拒否処分の違法性をもう一度外務大臣が争うことは紛争の蒸し返しであるから許されないものとする効果を生み出している。
しかし、これは外務大臣が本判決を受けて、別の理由でもう一度拒否処分を行うことは何ら禁止されるものではない。また、そもそも本来既判力は、積極的に何らかの行為を義務付けるものではなく、これも「義務付けられた対応」を問うている問題文に対する答えたりえない。
そこで、拘束力が解答の柱であることが分かる。
拘束力は、裁判所の判断内容を行政庁に尊重させる効力であるが、その内容をなす要素の中で、本件に関係あるのは、同一の事情のもとで同一の理由により同一の処分を行うことが出来なくなる効力である
(①不整合処分の取消し義務②再審査義務③原状回復義務④反復禁止効)といえる。
この反復禁止効の考え方によって裏付けられた行政事件訴訟法33条2項は、取消判決がなされた場合、「判決の趣旨に従い」、改めて「申請に対する処分・・・をしなければならない」と定めている。
「判決の趣旨」とは、本件でいうと、
(①拒否処分が違法であること②理由の提示が不十分であること③取消訴訟の請求を認容すること④旅券の発給を許可すべきこと)である。
そのため、結局、拘束力により、十分な理由を提示して、処分をやり直すこと、というのが端的な答えである。
なお、これはあくまで余談であるが、拘束力の実体は、実は既判力の一種と位置付ける学説も有力であるため、「既判力により」と表現しても誤りとまではいえないと思われる。
(解答)
②①③④②
・5問で20点。均等配点。