問題:Aは、飼っている大型のドーベルマンを、鎖を外したまま連れて散歩に出ていたが、この犬が歩行者Bを見かけて走っていき、襲いかかってしまった。そこで、あわててBは近くのC宅敷地に飛び込み、自転車や植木鉢を壊してしまった。この場合、Cに対する損害賠償責任をBが負わないためには、どのような要件を満たす必要があるか。
(下記の問題解説の文章に選択肢が含まれているので、正しいと思う選択肢を選んでいってください。アプリでタッチすれば次々と文章が流れていく形式を想定しておりましたので、選択肢の直後に解答がある場合もございますが、それはご了承ください。)
Cは、Bに対して不法行為に基づく損害賠償請求権を主張した場合、Cは家に飛び込むという「過失」により、Bの自転車や植木鉢等の財産権という「他人の権利」を侵害し、「損害」を与えているので、709条の要件には該当する。
しかし、そうだとしても、Bはドーベルマンが悪い!私は悪くない!と主張したいため、それを法律構成する必要がある。そこで今回の事例を見て思いつくべき法律構成は、
(①正当行為②緊急避難③正当防衛④過剰防衛)である。
正当行為と過剰防衛は答えではないとすぐ分かるだろうが、正当防衛と緊急避難の区別は少々難しい。
民法720条1項に規定のある正当防衛は、「他人の不法行為」に対するものであるのに対し、民法720条2項に規定のある緊急避難は、「他人」ではなく、「他人の物」から生じた危難を避けるものであるという点に違いがある。
本問では、「ドーベルマン」は、人ではない「物」であるが、Bに襲い掛かるという状況を作り出したのは、飼主Aの過失といえるため、「他人」の不法行為によるものであり、正当防衛の問題となるのである。
ちなみに、Aがきちんと鎖につないでいたのに、地震でやむなく鎖から手を放してしまい、自由になったドーベルマンがBに襲い掛かったような場合であれば、Aの過失がないため、ドーベルマンという「他人の物」から生じた危難と評価できるので、正当防衛ではなく、緊急避難の問題であった。
そして、正当防衛の要件であるが、民法720条は、「他人の不法行為」に対し、「権利又は・・・利益を防衛するため」、
「(①より重要な利益のために②加害の意図なく③やむを得ず④他に選びうる手段がない状況で)」加害行為をしたことが必要とされている。
本問に即していうと、他人であるAの過失によって引き起こされた不法行為に対し、
(①Bの財産②Bの生命・身体③Bの生活上の利益④Bの意思表示の自由)
を防衛するため、やむをえずCの植木鉢等を壊したという要件を満たす必要があるわけである。
(解答)
③③②
・3問20点。均等配点。小数点第一位以下を四捨五入。